不動産を共有名義で相続すると危険です。

勘違いされやすいのですが、共有不動産全体を売却する場合、共有者全員の承諾が必要ですが、「自分の持分」だけを売却する場合、共有者の承諾は不要だということです。
親から相続した土地をAとBが共有名義で相続しました。しかし後日、Bがお金に困って「変な人」に持分を売却してしまいました。すると「変な人」はAに対して自分の持分を主張して無謀な要求をしたり、高い金額でその持分をAに売りつけたりする可能性があります。このようなケースを防止するためにも、なるべく不動産を共有名義で相続することは避けましょう。

不動産を生前贈与すると危険です。

理由は以下です。
①自宅は相続時に小規模宅地の特例があります。
②そもそも相続時に大きな基礎控除枠があります。
③暦年贈与は非課税枠が110万円しかありません。
④不動産の贈与は登録免許税、不動産取得税、移転登記手数料がかかります。

①については、自宅という不動産の場合なら相続時まであえて何もしない方が得策と言えます。また②及び③については、相続時に大きな基礎控除枠があるのでわざわざ110万円という贈与税の非課税枠で贈与する必要性はないように思います。また④は贈与の都度かかる費用ですので、相続の場合なら1回で済む費用です。

安易な投資マンションの購入は危険です。

多額の現金はそのまま相続税の評価額となります。しかし、投資マンションを購入すれば一般的に購入価格より相続税評価額は低くなります。またさらに他人に貸せば評価額は低くなります。良いことばかりのようですがよく考えなければなりません。まず確実に他人に借りてもらわないと家賃収入はありません。また維持するための固定資産税や修繕費もかかります。それでも利益が出た場合は良いでしょうが、結局その利益には所得税及び住民税が課税されることになります。よく考えなければ本末転倒という危険性を含んでいます。

親族間での不動産売買は危険です。

無償で不動産を人に渡すと、贈与税が課税されるというのはこれまでの説明で御理解いただけたと思います。では、親族間で不動産を売買すればよいのではないかという疑問が生じます。ですが、不動産を譲渡する場合は売主に譲渡所得税が課税されます。さらに、その譲渡対価の額が時価(市場で取引されている価格)に比べて著しく低い価格と認定されれば、さらに買主に贈与税が課税されます。以下に例を挙げています。

時価5,000万円の土地(取得価額1,000万円)を
(例1)4,000万円で譲渡した場合(低額譲渡に該当しない、譲渡益)
(例2)2,000万円で譲渡した場合(低額譲渡に該当するが、譲渡益)
(例3)500万円で譲渡した場合(低額譲渡かつ、譲渡損)
(例4)無償で譲渡(つまり贈与)

例1売主買主
所得税4,000万円-1,000万円=3,000万円が譲渡益課税されます。税率は短期譲渡は30%、長期譲渡は15%です。実際の取得時に、実際の取得価額で取得したことになります。
贈与税5,000万円(時価)-4,000万円(対価)=1,000万円(時価との差額)が、著しく低い価額で贈与をうけたとみなされる場合は、贈与税が課税される可能性があります。
例2売主買主
所得税5,000万円×1/2=2,500万円>2,000万円と低額譲渡ですが、2,000万円-1,000万円=1,000万円で譲渡益です。したがって通常課税です。税率は短期譲渡は30%、長期譲渡は15%です。実際の取得時に、実際の取得価額で取得したことになります。
贈与税5,000万円(時価)-2,000万円(対価)=3,000万円(時価との差額)が、著しく低い価額で贈与をうけたとみなされる場合は、贈与税が課税される可能性があります。
例3売主買主
所得税5,000万円×1/2=2,500万円>500万円と低額譲渡でかつ、500万円-1,000万円=▲500万円で譲渡損です。したがって譲渡損はなかったものとみなされ内部通算できません。売主の取得価額、減価の額、取得時期をすべて引き継ぐという、贈与に準じた取り扱いをします。
贈与税5,000万円(時価)-500万円(対価)=4,500万円(時価との差額)が、著しく低い価額で贈与をうけたとみなされる場合は、贈与税が課税される可能性があります。
例4売主買主
所得税-(あえて説明するとすれば、5,000万円×1/2=2,500万円>0円と低額譲渡でかつ、0円-1,000万円=▲1,000万円で譲渡損です。したがって譲渡損はなかったものとみなされ内部通算できません。)売主の取得価額、減価の額、取得時期をすべて引き継ぎます。
贈与税無償譲渡は、贈与に該当するため贈与税が必ず課税されます。

ここで「時価とは何か?」が疑問に思われます。時価とは市場での取引価格です。では市場の取引価格がどうやって決まるのかというと、需要と供給です。つまり需要と供給が一致すれば、どれだけ高額であろうとどれだけ低額であろうとその金額で取引されるわけです。例えば、マイホームの大豪邸を1億円で売却しようとしても買い手がつかなければ安く売るしかなく、売却額が100万円ということのあり得ます。逆に、ボロボロのマイホームを2億円で買ってくれる買い手がいれば売却額が2億円ということです。これは、第三者との取引ですから自由な価格取引なのです。
しかし、「親族間の不動産売買」は「恣意性が介入している」と見られやすいわけです。税務署もそこを見ています。したがって親族間での取引は、「市場価格」を調査し、「固定資産評価額」や「路線価」を調査しながら慎重に価格を決定する必要があります。