被相続人に関する事務的な手続き

1.死亡届の提出(7日以内)

被相続人の死亡届の提出を義務づけられているのは、親族や同居人です。届出用紙は、市区町村役場や病院に置かれています。提出先は、死亡した人の本籍地か死亡地、または届出人の住所地(住民票が取れる場所)のうち、いずれかの市区町村役場です。提出期限は、死亡を知った日を含めて7日以内です。提出の際には、死亡診断書(死体検案書)を添付しなければなりません。これらの書面は死亡届の用紙と一体になっていて、医師が記入します。
死亡届を提出すると、死体埋火葬許可証が交付され、これがないと故人を火葬や墓地への埋葬ができません。

2.健康保険に関する手続き

被保険者が死亡した場合には保険証の返還と、脱退手続きが必要です。国民健康保険の場合は、死亡した日から14日以内に届け出ることが義務付けられています。
被保険者の死亡時に、葬祭費や埋葬料などの名目で、一定額の支給が行われます。葬祭費の請求権は一定期間を過ぎると消滅しますので注意してください。

3.公的年金に関する手続き

被相続人が死亡し、国民年金や厚生年金の被保険者だった場合は、年金受給権死亡届を提出しなければいけません。提出期限は、国民年金は死亡日から14日以内、厚生年金は死亡日から10日以内以内で、提出先は被相続人管轄の年金事務所です。もし被相続人に給付されていない年金があれば、未支給年金請求書も提出します。

被保険者が夫で国民年金のみ加入であった場合、「18歳未満のこどもがいる妻」又は「18歳未満のこども」でなければ、遺族基礎年金はもらえません。
被保険者が夫で厚生年金に加入していた場合、遺族厚生年金がもらえます。

4.所得税の準確定申告(4カ月以内)

生前の被相続人が自営業者などで、毎年確定申告をしていたような場合には、準確定申告をする必要があります。
準確定申告とは、相続人が、被相続人の死亡した年の1月1日から死亡した日までの所得を計算して、相続開始日から4カ月以内にしなければならない申告です。
相続人が2人以上いる場合には、各相続人が連署した準確定申告書を提出します。

5.生命保険金を請求する(すみやかに)

被相続人の死亡によって受け取れる生命保険には時効期間があり、一般的には3年で、かんぽ生命は5年です。受取人になっている人は、保険会社から交付される「保険証券」や「ご契約のしおり」、「約款」などを確認し、保険会社へ連絡しましょう。

遺産相続に必要な手続き

遺言書がなかった場合の手続きの流れ

1.相続人の確定

相続人が確定しなければ遺産分割を行うことができません。相続人を確定するためには、被相続人が生まれてから死亡するまでの連続した戸籍が必要となります。具体的には戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本です。戸籍謄本は、戸籍内の全員の記録を複写した書面です。除籍謄本は、戸籍内にいた者すべてが婚姻や死亡によっていなくなった戸籍謄本です。改製原戸籍謄本とは、戸籍制度の改正によって戸籍のスタイルが変更される前の戸籍謄本のことです。
被相続人の最新の戸籍謄本にすべてが記載されているわけではありません。除籍謄本や改製原戸籍謄本に、被相続人の隠された兄弟姉妹や過去の結婚、ひそかな養子縁組や認知などが記載されている可能性があります。そのため、相続人を確定させるにはこの3種類の戸籍謄本が必要なのです。

2.相続放棄・限定承認検討(3カ月以内)

遺産に借金が含まれている場合、相続したくないという場合も考えられるでしょう。相続人は3つの選択肢があります。
①単純承認です。これはプラスの財産及び借金などのマイナスの財産もすべて相続することです。
②相続放棄です。これはプラスの財産及び借金などのマイナスの財産もすべて相続しないという意思表示をすることです。
③限定承認です。プラスの財産よりマイナスの財産が明らかに多い場合には、相続放棄をすればよいのですが、どちらが多いかわからない場合があります。こうした場合に、相続したマイナスの財産を、相続したプラスの財産から弁済し、債務超過の場合は相続人固有の財産で弁済する責任を負わない、というのが限定承認です。清算の結果残余財産があれば、相続人に帰属することになります。

単純承認は、とくに手続きは必要ありません。相続放棄か限定承認する場合には、自分が相続人になったことを知った日から3カ月以内に、家庭裁判所に申し立てる必要があります。

3.遺産分割協議書を作成する

協議によって遺産分割を行った場合には、合意内容を遺産分割協議書にまとめておくことをおすすめします。遺産分割協議書は、法律によって義務づけられているわけではありませんので、たとえ作成しなかったとしても、遺産分割が無効になるわけではありません。しかし実際は、相続登記や相続税の申告などで遺産分割協議書の提出が求められます。
遺産分割協議書の作成は特に決まった形式はありませんが、だれがどの遺産を取得するかは、もれなく明記しなければなりません。また、作成した書面はすべての相続人が確認し、各自が署名・押印します。押印は実印で行ってください。

4.不動産の相続登記をする

土地や建物などの不動産については登記変更せずににいると、第三者に所有権を主張できないことがあります。そのため第三者が相続人より先に登記すると、相続人がその所有権を失う恐れがあります。相続に伴う相続は、相続登記と呼ばれ、登記をしようとする不動産所在地を管轄する登記所に行います。

5.株式・預貯金等の名義書換をする

証券会社に所定の書類等を提出して、名義書換の手続きを行います。被相続人の預貯金を相続しても、名義変更解約手続きをしないと、お金を引き出すことはできせん。どちらの場合も、相続人全員の承諾書や印鑑証明書、遺産分割協議書などが必要になります。

6.相続税申告書の作成及び納付(10カ月以内)

相続税の申告及び納付は遺産総額が基礎控除を超えた場合に行い、期限は相続開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内です。

自筆証書遺言の遺言書があった場合の手続き

1.遺言書の検認申し立て(遺言書を発見したら速やかに)

自筆証書遺言とは、全文を自分で書く遺言書です。注意していただきたい点は、すべて自筆で、日付、署名、押印が必要です。つまりワープロによるもの、代筆によるものは無効です。また日付の記入がないものは無効です。
自筆証書遺言を執行するためには、家庭裁判所で遺言書の検認を行わなければなりません。検認とは、相続人に対して遺言書の存在と内容を知らせ、遺言書の形状や加除訂正の状態、日付、署名など、遺言書の状態を明らかにすることです。遺言書の偽造を防止することを目的とした手続きです。
検認の申し立ては、遺言書の保管者が相続の開始を知ったり、相続人が遺言書を発見したらすみやかに行わなければなりません。申立先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。また、遺言書が封印されていた場合には、家庭裁判所で相続人又は代理人の立会いのもと、開封する決まりになっています。なお、遺言書が公正証書遺言の場合は、検認の手続きは不要です。

以下の手続きは、上記遺言がなかった場合の手順2~5を参考してください。

公正証書遺言の遺言書があった場合の手続き

1.公証役場の「遺言検索システム」で遺言の存在を確認する

家族が亡くなった場合、遺族はまず遺言があるかどうか調べる必要があります。自筆証書遺言については、被相続人が保管していそうなところを探すしか方法はありません。平成元年以降に作成された公正証書遺言なら、全国の公証人が利用できる「遺言検索システム」により調べることができます。下記の証明書を用意すれば、全国どこの公証役場でも遺言書の有無と公正証書遺言が保存されている公証人役場を教えてもらうことができます。

  • 戸籍謄本(親などが亡くなったこと、亡くなった人の相続人であることの証明する書面として)
  • 本人確認書類(運転免許書などの顔写真入りの公的機関が発行したもの)

以下の手続きは、上記遺言がなかった場合の手順2~5を参考してください。