(2023年9月14日作成)

結論

・遺言書は有名であるもののまだまだ活用されておりません。
・遺言書によって相続人の争いの発生により相続完了が滞ることを防ぎましょう。
・遺言書は公正証書遺言を選択しましょう。

遺言書とは?

遺言書とは、「ゆいごんしょ」と読むことも正解で「いごんしょ」と読むことも正解です。「ゆいごんしょ」とは、死後に備え生前に言い残す言葉をすべて指し、「いごんしょ」は、生前に言い残す言葉の中でも法的効力のあるものだけを示します。

遺言書は有名ですがその認知度とは対照的に活用されておりません

2019年1月13日及び2020年7月改正自筆証書遺言と公正証書遺言の比較2019年1月13日及び2020年7月改正自筆証書遺言公正証書遺言
作成方法・本文は自筆
・財産目録はパソコン作成が認められる。
・財産目録は通帳の写しや登記事項証明書の添付が認められる。
・公証役場において公証人に口述で作成してもらう。
・証人が2名必要
費用法務局での保管料1件、3,900円公証人への手続き費用、3~10万円
保管方法法務局での保管料1件、3,900円正本、謄本は本人の手元にあり、原本は公証人役場で保管
作成難易度について遺言者の知識による作成、責任、正確性が求められる正確性は保証される
法務省2018年調査、55歳以上の遺言書の作成割合・自筆証書遺言3.7%
・公正証書遺言3.1%
・遺言書作成経験なし93.2%
・自筆証書遺言3.7%
・公正証書遺言3.1%
・遺言書作成経験なし93.2%

(表1)2019年1月13日及び2020年7月改正自筆証書遺言と公正証書遺言の比較

年間死亡者数と年間公正証書遺言作成件数年間死亡者数年間公正証書遺言作成件数割合
2022/令和4年1,568,961111,9777.13%
2021/令和3年1,439,856106,0287.36%
2020/令和2年1,372,75597,7007.11%
2019/令和元年1,381,093113,1378.19%
2018/平成30年1,362,470110,4718.10%
2017/平成29年1,340,567110,7788.2%

(表2)年間死亡者数と年間公正証書遺言作成件数

遺言書を聞いたことが無い、という方はおられないのではないのでしょうか。しかし、55歳以上で遺言書を人生で一度も作成したことが無い人は93.2%となっております。

また、年間死亡者数で年間公正証書遺言作成件数を割ると7~8%となります。公正証書遺言を作成した方は作成した年以降の年で亡くなるケースの方が多いでしょうから、厳密にはこの算出には作成者の作成時期と作成者の死亡時期にタイムラグがあり意味のないものにも思われます。しかし、そのタイムラグが平均化されると考えると意味があり、結果として7~8%の数字に収束していると思われます。従って、年間で死亡する人のうち、公正証書遺言を作成している人は7~8%という数字は妥当するように思われます。

いずれにしても、遺言書はあまりに有名ですが、実際に利用されている割合は数パーセントということになります。

公正証書遺言が圧倒的におすすめです

遺言書の主たる目的として被相続人が自分の死後、遺産の相続を含め様々なことがスムーズに話が進むように、という考えがあると思います。しかしながら、自筆証書遺言はまずその遺言書の書式や方式が有効であるか、その保管が適切にされるかどうか、開封するときの検認が必要、などの様々な課題がむしろ発生します。公正証書遺言はある程度の費用は発生するものの、そのようなトラブルのタネは生まれません。公正証書遺言が理想的な遺言書と言って過言ではないでしょう。

実は一般家庭の方が遺言書が必要です

平成29年度司法統計より、遺産分割事件のうち認容・調停成立件数の価格割合が、

・1,000万円以下が32%
・1,000万円~5,000万円以下が43%

つまり、5,000万円以下で75%となっております。遺産総額5,000万円は決して富裕層のではなく、一般家庭のお話と考えられます。

遺言書を作成できない場合とは

・15歳未満の未成年者
・認知症の症状がある者

は遺言書を作成することができません。認知症については誰しもが発症する可能性を有しております。相続対策はお早めに、今すぐに、というキャッチフレーズのような言葉は真実を表しておりました。

なお、認知症の場合、基本的に贈与の行為も認められなくなりますので、生前対策もできないこととなります。

遺言執行者を指定した遺言書を必ず作成しましょう

まず遺言書に遺言執行者の記載のない遺言書は有効か無効かという点ですが、自筆証書遺言であっても、公証役場で作成した公正証書遺言であっても、実は、遺言執行者の記載は必要不可欠な内容ではありません。つまり、遺言書の中に遺言執行者が記載されていなくても、それだけで遺言自体が無効になることはない、となります。

しかし、遺言執行者がいなければ遺言の内容が、適切に実行されない恐れがあります。そこで遺言執行者を選ぶ方法として

・専門家又は信託銀行を選ぶ
・それ以外を選ぶ

がありますが、専門家又は信託銀行を選ぶ、をおすすめいたします。

遺言執行者として誰を選ぶ?

あくまで一般的に、ですが、

・行政書士、司法書士の場合、が費用的に魅力的のようです
・弁護士の場合は、行政書士、司法書士、より費用は高額で、信託銀行より低額のようです
・信託銀行は、高額の財産しか受け付けない、法令により直接法律業務を扱えない為結局法律家へ外注するため費用が高額になる、と言われているようです。

以上から、まずは、行政書士、司法書士へ、遺言書の作成を含めてご相談されてはいかがでしょうか。

相続税申告と遺言書

相続税申告ですが、まず遺言書がある場合と遺言書が無い場合で大きく分かれます。遺言書があれば財産の把握がスムーズ、遺産分割協議が無くスムーズ、となります。

こちらのページをご参考いただきながらお伝えしますと、実は相続税申告は原則として相続人がバラバラでそれぞれ相続税申告することです。従って、仮に相続人が絶縁していた場合は、遺言書が無ければ遺産分割協議ができず未分割となりますが、遺言書があれば、他の相続人を無視して相続税申告が完了となります。

相続税の共同申告は実は例外の申告方法とされています

しかしながら、遺言書と小規模宅地等の特例という論点において、落とし穴が存在します。こちらのページをご参考ください。

遺言書と小規模宅地等の特例の関係性について

また遺留分を侵害している遺言書については改正後に発生した相続については生じる問題が少なくなりました。こちらのページをご参考ください。

遺言書と遺留分制度の関係性について

以上をまとめますと、いくつか気を付ける論点はあるものの相続税申告の観点からも遺言書の作成は有意義である、と言えると解されます。

まとめ

有名であるもののまだまだ活用されていない遺言書を活用しましょう。