(2024年4月15日作成)

税務調査通知後に税務調査の初日の前日までに事前に自主修正申告すれば相続税の重加算税賦課を回避可能なことは明記されています

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税務署からの調査通知後から調査初日の前日までに事前に相続税の自主修正申告書を提出すれば、重加算税賦課を回避できることは国税通則法で明記されています

自主修正申告について更正の予知があったかどうかがとても重要となります

更正の予知があったかどうかの判断基準については下記の解釈が有力とされています。

・国税庁の事務運営指針より、臨場のための日時の連絡を行った段階では更正の予知は発生していない
・調査着手説より、実地調査が開始された後の修正申告は更正を予知してされたものとされる

となります。

しかしながら実際の実務においてはその判断に迷うような疑問が発生するのではないかと想定されます。例えば、もし仮に調査通知や事前通知の段階で、「ほかに土地はお持ちではないですか?」「ほかに通帳は存在しませんでしたか?」などヒントになるような発言が税務調査官からあった場合の取り扱いはどうなるのか?などの細かい疑問です。

このような疑問についての有力な事例が、国税不服審判所の公表裁決事例に存在することにたどり着きました。

当該裁決の詳細

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平成30年調査開始後の自主修正申告だが事前通知後に自主修正申告申し出有りのため更正の予知は無かったとした及び納税者が相続開始前に引出した現金が相続財産に該当すると認識していたとは認められないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決(争点1更正の予知を中心に)

当該裁決の重要な前提条件

・当該裁決は、国税通則法平成28年(2016年)改正による平成29年1月以降に法定申告期限が到来するものについては調査通知後かつ更正の予知前の自主修正申告について過少申告加算税が課されることなる前の、平成28年7月に平成26年に法定申告期限が到来する相続税の税務調査の事例です。
・したがって当該裁決当時は、調査通知は存在せず事前通知のみが存在していました。
・したがって当該裁決当時は、事前通知後かつ更正の予知前であれば過少申告加算税が賦課されず、重加算税も賦課されないという制度でした。

当該裁決で明らかとなった重要な論点

・国税不服審判所は以下のように判断を明示したことは確実である。当該裁決当時の旧国税通則法65条第5項が、事前通知後かつ更正の予知前であれば過少申告加算税が賦課されない旨を規定しているのは、課税庁において課税標準を調査する等の事務負担等を軽減することができることも勘案して、自発的に修正申告を決意し修正申告書を提出した者に対しては例外的に加算税を賦課しないこととし、もって納税者の自発的な修正申告を奨励することを目的とするものと解される。
・裁決文における審査請求に至る経緯によれば、本件調査担当職員は、平成28年7月20日に予定している実地調査の前である、平成28年7月15日の午後に本件税理士に電話をし、当該電話は調査による質問検査である旨を宣言した上で、本件預金取引について質問をした。

以上から、下記のように解されます。

・調査通知後から税務調査開始までの期間は、納税者の自発的な修正申告を奨励することを目的とした期間であるので「原則として」ではなく「当然として」更正の予知が無い期間として尊重されなければならない期間ではないのか、ということ。
・調査を開始するに当たっては「質問検査である旨の宣言」がされなければならず、知らない間に調査が始まっているということはあってはならない、ということ。

当該裁決のみでは結論を出せない論点

・国税不服審判所は、請求人が依頼した税理士が、事前通知後に自主修正申告を行う旨の申し出を電話で行い、その後の電話で調査官から質問検査の宣言を受けた後、調査日の前日までに自主修正申告をしたことについて、更正の予知は無かったとしました。しかしこれでは、本件においては調査開始後に自主修正申告したことになるはずであり更正の予知なしを満たさない、という点に疑問が残りました。
・本件は、修正すべきであった金額は相続発生前に引き出した金員約1,000万円であり、自主修正申告した部分は約500万円であり、残額の約500万円が申告漏れとなりました。国税不服審判所は、更正の予知があったのであれば1,000万円全体を修正申告したであろうところ、500万円のみに過ぎなかったため、更正の予知はなかったと判断したのか、その点については疑問が残りました。

当該裁決から導いた調査通知後に注意すべき点

もし仮に調査通知後かつ税務調査の初日の前日までに事前に自主修正申告するつもりであるならば、その事は決して税務調査官に伝えてはならない、もし仮に伝えればすぐさま「税務調査の開始宣言」を行い、更正の予知を発生させようとする可能性が高まります。