(2024年2月5日作成)

結論

・重加算税の賦課要件である隠蔽(いんぺい)仮装については法律で明確にはされていません。
・法律ではない通達に近い存在である事務運営指針に隠蔽(いんぺい)仮装の例示があるため、それに頼ることになります。
・しかし事務運営指針の例示に該当しない、積極的な隠蔽(いんぺい)仮装が存在しない場合については、批判的な意見が存在するものの「過少申告の意図を外部からうかがい得る特段の行動」をしたかどうか総合勘案する、という方法が採用されています。
・事務運営指針において、相続税においてのみ隠蔽(いんぺい)仮装を総合的に判断して、合理的に推認という文言が使用されています。

相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについての事務運営指針とは

・相続税法、贈与税法、などは法律です。
・通達というのは上位官庁が下位官庁に対して発する内部規則(内規)です。つまり国税の分野においては、国税庁が国税局や税務署に対して発する内部規則(内規)となります。したがって通達は法律ではありません。
・事務運営指針は、通達と同じ内規です。違いは、
◎事務運営指針:国税の「内部事務」を行うにあたって国税全体が守るべき統一的なルール
◎通達:「法令解釈」を行うにあたって国税が守るべき統一的な解釈
となります。

重加算税賦課要件である隠蔽(いんぺい)仮装はどのような行為なのか?

弊所は、所得税及び法人税の税務調査専門税理士としても活動しております。こちらのページをご参考ください。

税務調査開始後、調査中の段階で重加算税を回避する方法が曖昧、不明瞭、いくら調べてもよくわからないのはなぜか – 税務調査の重加算税回避無申告解消専門全国対応京都の税理士 (tt-web.sakuraweb.com)

税理士鴻秀明の隠ぺい仮装の拡大解釈や総合勘案による重加算税賦課はすべきでないという意見 – 税務調査の重加算税回避無申告解消専門全国対応京都の税理士 (tt-web.sakuraweb.com)

内容を端的にまとめますと

・重加算税賦課要件である、隠蔽(いんぺい)仮装については、税法、通達において定義づけられておりません。
・唯一、事務運営指針において隠蔽(いんぺい)仮装の内容、具体例が明示されているため、隠蔽(いんぺい)仮装の判断についてはまず事務運営指針を頼ることになります。
・事務運営指針は「積極的な」隠蔽(いんぺい)仮装の明示であり、「積極的な」隠蔽(いんぺい)仮装が存在しない場合はどうするのか、については批判的な意見が存在するものの「過少申告の意図を外部からうかがい得る特段の行動」をしたかどうか総合勘案する、という方法が採用されています。

下記においては、「積極的な」隠蔽(いんぺい)仮装の明示である事務運営指針を見てみましょう。

相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)を見ましょう

原文

原文についてはこちらをご参考ください。

(令和5年6月23日付改正)相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)

弊所独自の要約

上記の原文を読みやすいように弊所にあくまで弊所独自にまとめます。

◎相続税関係
・「隠蔽し、又は仮装し」とは、例えば、次に掲げるような事実(以下「不正事実」という。)がある場合をいう。
・相続人等を相続人(受遺者を含む。)又は相続人から遺産(債務及び葬式費用を含む。)の調査、申告等を任せられた者と定義づける。
(1) 相続人等が、帳簿、決算書類、契約書、請求書、領収書その他財産に関する書類(以下「帳簿書類」という。)について改ざん、偽造、変造、虚偽の表示、破棄又は隠匿をしていること。
(2) 相続人等が、課税財産を隠匿し、架空の債務をつくり、又は事実をねつ造して課税財産の価額を圧縮していること。
(3) 相続人等が、取引先その他の関係者と通謀してそれらの者の帳簿書類について改ざん、偽造、変造、虚偽の表示、破棄又は隠匿を行わせていること。
(4) 相続人等が、自ら虚偽の答弁を行い又は取引先その他の関係者をして虚偽の答弁を行わせていること及びその他の事実関係を総合的に判断して、相続人等が課税財産の存在を知りながらそれを申告していないことなどが合理的に推認し得ること。
(5) 相続人等が、その取得した課税財産について、例えば、被相続人の名義以外の名義、架空名義、無記名等であったこと若しくは遠隔地にあったこと又は架空の債務がつくられてあったこと等を認識し、その状態を利用して、これを課税財産として申告していないこと又は債務として申告していること。

暗記しやすいよう、更なる弊所独自の要約

「隠蔽し、又は仮装し」とは、例えば、次に掲げるような行為である。

1、相続人等が帳簿書類を、改ざん、偽造、変造、虚偽の表示、破棄又は隠匿をしていること。
2、相続人等が、課税財産を隠匿し、課税財産の価額を圧縮していること。
3、相続人等が、架空の債務をつくり、課税財産の価額を圧縮していること。
4、相続人等が、事実をねつ造して、課税財産の価額を圧縮していること。
5、相続人等が、関係者と通謀して帳簿書類について改ざん、偽造、変造、虚偽の表示、破棄又は隠匿を行わせていること。
6、相続人等が、自ら虚偽の答弁を行っていること。
7、相続人等が、その他の事実関係を総合的に判断して、課税財産の存在を知りながらそれを申告していないことなどが合理的に推認し得ること。
8、相続人等が、架空等を認識し、その状態を利用して、これを課税財産として申告していないこと又は債務として申告していること。

所得税、法人税、相続税の税目による事務運営指針の差異比較

所得税、法人税、相続税の税目による事務運営指針の差異比較所得税法人税相続税
隠蔽仮装の行為者についての言及有り(申告等を任せられた者の言及は無し)無し有り
不正事実という文言の使用有り有り有り
調査時の虚偽答弁の言及有り無し無し
総合的に判断して、合理的に推認という文言の使用無し無し有り

(表1)所得税、法人税、相続税の税目による事務運営指針の差異比較表

隠蔽仮装の行為者についての言及

まず、隠蔽(いんぺい)仮装行為を納税者が行った場合、納税者以外の第三者が行った場合、依頼した税理士が行った場合、どのように解釈するのか、という論点が存在することについて、こちらのページをご参考ください。

最高裁平成17年1年17日判決を見る – 税務調査の重加算税回避無申告解消専門全国対応京都の税理士 (tt-web.sakuraweb.com)
最高裁平成18年4月20日判決を見る – 税務調査の重加算税回避無申告解消専門全国対応京都の税理士 (tt-web.sakuraweb.com)
税理士以外の第三者行為についての谷原誠の見解についての弊所独自の考察 – 税務調査の重加算税回避無申告解消専門全国対応京都の税理士 (tt-web.sakuraweb.com)

内容について端的にまとめますと

・納税者以外の者が隠蔽(いんぺい)仮装行為を行った場合にその納税者に重加算税が賦課されるのかどうかについては法律においては明確にされていません。
・法律で明確にされていないことは、最高裁の判例に基づいて判断することが有意義とされています。
・納税者以外の者が隠蔽(いんぺい)仮装行為を行った場合について、納税者から委任を受けた税理士が隠蔽(いんぺい)仮装行為を行った場合について最高裁判例は、納税者の行為と同一視できるかどうかで判断するとしています。
・納税者以外の者が隠蔽(いんぺい)仮装行為を行った場合について、納税者でもなく委任を受けた税理士でもない第三者が隠蔽(いんぺい)仮装行為を行った場合については、最高裁判例が存在しないため、税理士谷原誠は、まず実質所得者課税で第三者行為が納税者の行為と同一視できるかどうか検討し、同一視できた場合に、その第三者が隠ぺい、仮装行為していた場合は重加算税賦課要件を満たす、と主張しております。

当該論点について

・所得税法、隠蔽仮装の行為者について言及有り(申告等を任せられた者の言及は無し)
・法人税法、隠蔽仮装の行為者について言及無し
・相続税法、隠蔽仮装の行為者について言及有り

となっております。当該差異については原因は不明です。

不正事実という文言の使用

隠蔽(いんぺい)仮装の定義が曖昧であることについては、こちらのページをご参考ください。

税務調査開始後、調査中の段階で重加算税を回避する方法が曖昧、不明瞭、いくら調べてもよくわからないのはなぜか – 税務調査の重加算税回避無申告解消専門全国対応京都の税理士 (tt-web.sakuraweb.com)

税理士鴻秀明の隠ぺい仮装と偽りその他不正の行為の違いを明らかにすべきという意見 – 税務調査の重加算税回避無申告解消専門全国対応京都の税理士 (tt-web.sakuraweb.com)

内容を端的にまとめますと

・重加算税の要件である隠蔽(いんぺい)仮装の定義は曖昧である
・税務調査の対象期間が7年になる根拠等である「偽りその他の不正行為」と隠蔽(いんぺい)仮装は異なるはずであり、法律上は不正計算、不正所得、不正事実という文言は存在しないが、国税庁が使用しているため混乱を招いている

となります。

当該論点について

・所得税法、不正事実という文言の使用有り
・法人税法、不正事実という文言の使用有り
・相続税法、不正事実という文言の使用有り

となっております。当該理由については原因不明となっております。

調査時の虚偽答弁の言及

事務運営指針における調査時の虚偽答弁の言及について、こちらのページをご参考ください。

重加算税の取り扱いについての事務運営指針とは – 税務調査の重加算税回避無申告解消専門全国対応京都の税理士 (tt-web.sakuraweb.com)

当該論点について

・所得税法、調査時の虚偽答弁の言及有り
・法人税法、調査時の虚偽答弁の言及無し
・相続税法、調査時の虚偽答弁の言及無し

となっております。当該理由については原因不明となっております。

総合的に判断して、合理的に推認という文言の使用

当該論点について

・所得税法、総合的に判断して、合理的に推認という文言の使用無し
・法人税法、総合的に判断して、合理的に推認という文言の使用無し
・相続税法、総合的に判断して、合理的に推認という文言の使用有り

となっております。当該理由については原因不明となっております。ただ、事業取引に関する税法である所得税及び法人税と相続税では隠蔽(いんぺい)仮装についての考え方が異なるのではないかという指摘が存在します。こちらのページをご参考ください。

相続税の重加算税とは及び隠蔽(いんぺい)仮装とは

所得税の納税義務者である個人事業主が売上を漏らすこと及び法人税の納税義務者である法人(代表者)が売上を漏らすこと、と比較して相続税の納税義務者である相続人が財産を漏らすことについては差があるということなのでしょうか。当該論点について結論はでておりません。

まとめ

・相続税の隠蔽(いんぺい)仮装の判断についてはまず事務運営指針を見ることになると解されます。
・事務運営指針で判断できない場合は、総合的に判断することになると解されます。