(2024年4月10日作成)

結論

・相続税の税務調査において税務調査官から隠ぺい仮装の存在を主張されたことに伴う重加算税の賦課決定がされた場合で、弊所の立場から見ても処分庁が隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりではないだろうと感じるケースであっても、隠ぺい仮装は認められず重加算税賦課が取り消されたケースが存在しました。
・つまり、相続税の税務調査において隠ぺい仮装があり重加算税を賦課すると税務署が主張し、請求人は分が悪いだろうと感じる事例であっても、国税不服審判所で争えば、重加算税賦課が取り消される可能性は十分存在すると解されます。
・当該ページの分析により、国税不服審判所の重課税賦課の判定基準のようなものが導き出されました。それは、認識、秘匿、調査時の態度、という基準です。

あくまで弊所独自の見解により、処分庁が隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりと感じた件数、いいがかりとは言えないと感じた件数まとめ

隠ぺい仮装を認めた国税不服審判所公表相続税裁決の中で、処分庁が隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりと感じた件数、いいがかりとは言えないと感じた件数件数
いいがかりと感じた13
いいがかりとは言えないと感じた4
合計17

いいがかりと感じた割合=13/17=76.4%

いいがかりとは言えないと感じた割合=4/17=23.6%

となります。

いいがかりとはいえないと感じた、とは?

国税不服審判所が、請求人は相続財産を認識しており計上を失念しやすい財産ではなかったと判断したにも関わらず調査に協力的であった等の理由により隠ぺい仮装は無かったとした事例を、いいがかりとはいえないと感じると定義しました。

いいがかりとはいえないと感じた事例一覧

平成28年相続税無申告であり財産を認識しており調査時に証拠隠滅行為が存在しても調査時にすぐに改めたとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決
平成28年相続税無申告でありお尋ね回答書に回答漏れの財産が存在しても調査時に指摘を認めたとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決
平成30年納税者が認識しておりかつ失念しやすい相続財産ではなかったとしても調査時に協力的であり意図的であったとは推認できないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決
令和元年法定されているものではないお尋ね文書の回答に事実と異なる記載が存在しても隠ぺい仮装を認めなかった裁決

下記において簡潔にコメントいたします。なお、事案の詳細については対象ページをご参照ください。

平成28年相続税無申告であり財産を認識しており調査時に証拠隠滅行為が存在しても調査時にすぐに改めたとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決

平成28年相続税無申告であり財産を認識しており調査時に証拠隠滅行為が存在しても調査時にすぐに改めたとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決

・請求人は相続財産及び相続税申告義務を十分認識していたと国税不服審判所は判断し、事実の秘匿や隠ぺい行為に及んだと国税不服審判所は判断したにも関わらず、隠ぺい仮装行為はないと国税不服審判所は判断した点が、処分庁が隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりではない、と感じました。

平成28年相続税無申告でありお尋ね回答書に回答漏れの財産が存在しても調査時に指摘を認めたとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決

平成28年相続税無申告でありお尋ね回答書に回答漏れの財産が存在しても調査時に指摘を認めたとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決

・請求人はお尋ね回答書において本件各口座の存在を隠していると国税不服審判所は判断したにも関わらず、調査時において本件各口座の存在を認め隠す態度を一貫していたとは言えないとして隠ぺい仮装行為はないと国税不服審判所は判断した点が、処分庁が隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりではない、と感じました。

平成30年納税者が認識しておりかつ失念しやすい相続財産ではなかったとしても調査時に協力的であり意図的であったとは推認できないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決

平成30年納税者が認識しておりかつ失念しやすい相続財産ではなかったとしても調査時に協力的であり意図的であったとは推認できないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決

・請求人は相続財産を十分認識していたと国税不服審判所は判断し、失念しやすい相続財産ではなかったと国税不服審判所は判断したにも関わらず、調査時において協力的であったとして隠ぺい仮装行為はないと国税不服審判所は判断した点が、処分庁が隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりではない、と感じました。

令和元年法定されているものではないお尋ね文書の回答に事実と異なる記載が存在しても隠ぺい仮装を認めなかった裁決

令和元年法定されているものではないお尋ね文書の回答に事実と異なる記載が存在しても隠ぺい仮装を認めなかった裁決

・請求人はお尋ね回答書において請求人取得財産及び本件姉取得財産を記載せずにこれを提出したと国税不服審判所は判断したにも関わらず、調査時において協力的であったとして隠ぺい仮装行為はないと国税不服審判所は判断した点が、処分庁が隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりではない、と感じました。

相続税の税務調査において隠蔽(いんぺい)仮装と思しき行為が存在していたと指摘されても調査に協力的であれば重加算税を回避できるのか

上記の事例は、隠蔽仮装と疑われるような行為、隠蔽仮装と言われても仕方がない行為、であっても相続税の税務調査時に素直に認めれば、状況が回復するような事例のように感じました。

こちらのページにおいて検討することとします。

 

まとめ

相続税の税務調査において、これは明らかに納税者の隠ぺい仮装行為に該当するだろう、と思われる事例であっても、国税不服審判所で争えば重加算税の賦課が取り消される可能性があります。