(2023年9月14日作成)
重要な論点
遺留分とは、遺留分の割合とは、という論点も重要ですが、弊所の私見ではそれと同等に重要な論点が存在します。それは、現在は、遺留分が主張された場合には、遺留分侵害額に相当する額の金銭債権が発生し、金銭債権の支払いを求めることが原則されています。
以下で詳細を解説します。
平成30年(2018年)民法相続法改正により、2019年7月1日以前に発生した相続については改正前の遺留分減殺請求、それ以後は改正後の遺留分侵害請求が適用されます。
平成30年(2018年)民法相続法改正により、2019年7月1日以前に発生した相続については改正前の遺留分減殺請求、それ以後は改正後の遺留分侵害請求が適用されます。
改正前の遺留分減殺請求権は何が問題だったのでしょうか。改正前の遺留分減殺請求権は行使されると、
・価額弁償(金銭支払い)は例外
・現物返還が原則
とされていました。そうすると、改正前の遺留分減殺請求権の目的物が土地等の不動産の場合は、原則として共有状態となり、価額弁償(金銭支払い)は請求者の同意を得た場合に限る、となっておりました。
例えば、経営者であった被相続人の相続人が長男、長女のみであってケースとします。財産の全てである会社の土地建物を後継者である長男にすべて相続させる遺言書を作成し、長女は何ももらえず不満で遺留分減殺請求権を行使すると、会社の土地建物が共有状態となることが原則とされていたため、円滑な事業承継が阻害される恐れがあったことが問題でした。長男としては金銭の支払いで解決したい場合であっても、まずは長女が価額弁償に同意してくれなければならず、価額弁償の話し合いが進まなければ、価額弁償額の確認を求める訴え、というような裁判を起こす必要がありました。
しかしながら、改正後は価額弁償が原則とされており、改正後が遺留分の主張によって目的物が直ちに共有状態となることはありません、となりました。
2019年6月30日以前発生相続であれば2029年6月30日までは改正前の遺留分減殺請求権は起こるのか?は弁護士に確認お願いいたします。
まず初めに、当該論点については弊所は調べきれておりませんので、弁護士に確認お願いいたします。
改正前の遺留分減殺請求権は
・相続開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間で時効消滅
・知らなかったとしても相続10年間で時効消滅
となっております。そうすると、
・知った時から1年間の時効消滅については、改正前遺留分減殺請求権の発生する可能性は、現在無い
・知らなかった相続10年間で時効消滅については、最長で2029年6月30日までは、改正前遺留分減殺請求権の発生はは存在すると思われる
というのが弊所の見解です。
しかしながら、繰り返しますが当該論点については弁護士にご確認ください。
民法相続法改正後については不動産を含む遺言書を作成する場合でも遺留分を前ほど気にしなくてよくなった、相続人はお金で解決できるから
上記のように、民法相続法改正前の遺言書においては、不動産を含む遺言書作成について遺留分を気を付ける必要がありました。繰り返しとなりますが、なぜなら、遺留分減殺請求権が行使されるとその目的物が原則として共有状態になるため、目的物が不動産の場合は不動産の共有状態が必然となってしまうからです。しかしながら、改正後に発生する相続については、遺留分侵害額の請求があったとしても相続人は原則として価額弁償すれば解決できますので、以前よりは、遺留分を気にせず遺言書を作成可能となったと思われます。
ここで遺留分について
遺留分とは
遺留分とは、遺言書で財産の分配が定められている場合でも、法律上定められている一定の相続人が最低限相続できる財産割合のことです。よく例えられる例としては、「愛人にすべての財産を相続させるとあっても法定相続人は遺留分は請求可能」というたとえ話はあまりに有名かと思います。
具体的には、以下の範囲の相続人が対象となります。
・配偶者
・子ども、孫などの直系卑属
・親、祖父母などの直系尊属
(・兄弟姉妹(甥姪)には存在しない)
となります。
遺留分割合の具体例
遺留分割合の計算式については、遺留分の割合は「法定相続分の半分」(直系尊属者のみが相続人の場合は「法定相続分の3分の1」)と暗記します。
具体例としては下記となります。
(引用元:弁護士法人 東京新宿法律事務所、相続専門サイト)
(遺産全体を1とした場合)
<相続人が配偶者のみの場合>
・遺留分合計 1/2
・配偶者の遺留分 1/2
・子供の遺留分 -
・親の遺留分 -
・兄弟の遺留分 -
<相続人が配偶者と子供の場合>
・遺留分合計 1/2
・配偶者の遺留分 1/4
・子供の遺留分 1/4
・親の遺留分 -
・兄弟の遺留分 -
<相続人が配偶者と親の場合>
・遺留分合計 1/2
・配偶者の遺留分 1/3
・子供の遺留分 -
・親の遺留分 1/6
・兄弟の遺留分 -
<相続人が配偶者と兄弟の場合>
・遺留分合計 1/2
・配偶者の遺留分 1/2
・子供の遺留分 -
・親の遺留分 -
・兄弟の遺留分 -
<相続人が子供のみの場合>
・遺留分合計 1/2
・配偶者の遺留分 -
・子供の遺留分 1/2
・親の遺留分 -
・兄弟の遺留分 -
<相続人が親のみの場合>
・遺留分合計 1/3
・配偶者の遺留分 -
・子供の遺留分 -
・親の遺留分 1/3
・兄弟の遺留分 -
<相続人が兄弟のみの場合>
・遺留分合計 -
・配偶者の遺留分 -
・子供の遺留分 -
・親の遺留分 -
・兄弟の遺留分 -
となります。
なお、弁護士法人 東京新宿法律事務所、相続専門サイトには、「遺留分簡易計算ツール」が提供されております。
遺留分の請求と相続税申告について
遺言書により財産を取得した相続人が相続税申告の作成の必要性を認識し、相続税申告書を作成している段階で、遺留分の請求がその他の相続人からあった場合はどうなるのでしょうか。
・遺留分の請求がされている相続税申告は未分割申告とはなりません。
・遺留分の請求が無かったもとのみなして相続税申告を行います。
となります。
まとめ
・民法相続法改正により遺留分減殺請求権から遺留分侵害請求権に変更されております。
・民法相続法改正により、遺留分侵害の請求があった場合は、原則として価額弁償・金銭による支払いとされております。