(2023年8月27日作成)(2024年9月15日再編集)
結論
・現金預貯金の評価方法は残高金額と単純明快です。しかし評価方法は簡単ですが当該残高金額を捕捉・把握することが困難かつ難易度が高いとなります。
・実際に国税庁が公表している申告漏れ相続財産の金額の構成比の推移というデータにおいて税務調査において指摘される申告漏れ財産1位は現金・預貯金等です。もし仮に本当に簡単であるのであればこのような結果とはならないはずです。
・現状はネット記事による解説を筆頭に、相続税専門書籍の解説であってもなぜか現金預貯金はさらっと解説されております。
・しかし名義財産を題材とした書籍も増加しつつあります。
・名義預金の税務調査については贈与税の除斥期間や相続税基礎控除範囲や相続税率と贈与税率が絡み合う攻防となると解されます。
・現在の世の中は様々な取引がデータとして残る傾向にありますので何かのデータにより突合されて「使途不明出金=家事費家庭費生活費でごまかして結論付けるやり方」は通用しなくなると解されます。
・上記を踏まえた弊所のコンセプトは時流に乗っていると自負しております。
下記で詳細を記述します。
現金預貯金の評価方法は残高金額と単純明快です。しかし評価方法は簡単ですが当該残高金額を捕捉・把握することが困難かつ難易度が高いとなります
相続税計算における現金の評価額、普通預金の評価額は下記となります。
・現金は、相続発生日における残高金額
・普通預金は、相続発生日における残高金額
つまり相続発生日における残高を評価すればよいだけですのでとても簡単となります。しかし、様々な理由から当該残高を捕捉、把握することが困難かつ難易度が高いことになります。
下記で詳細を記述します。
実際に国税庁が公表している申告漏れ相続財産の金額の構成比の推移というデータにおいて税務調査において指摘される申告漏れ財産1位は現金・預貯金等です。もし仮に本当に簡単であるのであればこのような結果とはならないはずです
こちらのページをご参考ください。
相続税でもっとも簡単と思われがちな現金・預貯金等が税務調査において指摘される確率の最も高い財産であるとデータで公表されています。
現状はネット記事による解説を筆頭に、相続税専門書籍の解説であってもなぜか現金預貯金はさらっと解説されております
ネット検索で、相続 現預金 評価と検索すると異口同音に下記のような文章が散見されます。
・普通預金の相続税評価額は相続開始日の預金残高です。
・定期預金は既経過利息に気を付けましょう。
・相続開始直前に引き出した現金は現金として評価することに注意しましょう。
・名義預金に気を付けましょう。相続開始前5年程度の通帳の内容は検討しましょう。
重要項目が実にあっさりと記述されています。
相続税専門書籍、相続税を題材とした書籍においても現金預貯金はさらっと解説されている傾向にあります。
しかし名義財産を題材とした書籍も増加しつつあります
弊所が参考とした書籍は下記となります。
・安部和彦「相続税調査であわてない名義財産の税務(第3版)」中央経済社(2021年2月20日)
・武田秀和「相続税調査はどうおこなわれるか」税務経理協会(令和3年8月30日)
・秋山清成「厳しい税務調査がやってくる続間違いだらけの相続税対策」中央経済社(2021年1月25日)
これらの書籍は、現預金についての重要性を述べています。
安部和彦「相続税調査であわてない名義財産の税務(第3版)」中央経済社(2021年2月20日)より
・p12より、調査により把握される申告漏れ相続財産に占める現金・預貯金等の割合となると40%弱にまで跳ね上がる。要するに、相続税の税務調査における主戦場は「現金・預貯金等」にあるということがいえるということである。
・p88より、相続税の税務調査に関しては「名義預金を制する者が税務調査対策を制する」と言っていいくらい重要性が高い項目である。
・p97より、相続税・贈与税に関する名義財産の最大の問題点は、被相続人が相続人に知らせずに名義を変更するといった理由で、相続人がその存在そのものを知らないケースが多いため、意図せずして相続財産に含めるべき名義財産を申告に含めず、税務調査において初めて申告漏れを指摘されることにある。
税務調査対策の要諦(ようたい)は、事前準備にあるといっていいだろう。相続税調査のように他税目と比較して調査割合が高く、一般的に納税者が調査に不慣れな場合においては、なおさらである。そのため、調査の事前通知があればすぐに(できれば申告段階から)調査の事前打ち合わせを行い、万全の準備をして調査に臨むことになる。ところが、納税者(=相続人)が事前に把握していない名義預金の存在を調査の場において初めて調査官から指摘された場合には、経験豊富な税理士といえどもそれに対してできることは非常に限定され、通常は言われたとおりに認め、修正申告に応じるほかない。名義預金の指摘は、事前準備を無にすることさえあるのである。
逆にいえば、調査官は名義預金を把握し指摘することができれば、調査を優位に進めることができるため、その把握に注力することとなる。相続税調査において名義預金こそが「主戦場」となるのは、このためである。税務調査対策は、納税者と税理士との信頼関係が極めて重要であり、それには税理士が申告内容とその裏付けを可能な限りすべて把握していることが前提となる。名義預金の存在は、信頼関係を一瞬のうちに破壊しかねない爆弾ともなりうる。
したがって、相続税・贈与税に関する税務調査対策の基本は、名義預金をはじめとする名義財産を生じさせないこと、少なくとも相続人が把握していないような名義財産をしょうじさせないことになるだろう。
武田秀和「相続税調査はどうおこなわれるか」税務経理協会(令和3年8月30日)より
p133より、相続税の実地調査により申告漏れと把握されるのは現金、預貯金等及び有価証券で約50%です。つまり相続税の調査は、金融資産調査が全てです。
秋山清成「厳しい税務調査がやってくる続間違いだらけの相続税対策」中央経済社(2021年1月25日)
p100、預貯金や株券などの金融資産は申告せずに隠すことができますから、自ずと金融資産の多い事案を調査選定するというのは税務署内部では常識みたいなものなんです。
名義預金とは?
名義財産の定義
・名義財産という言葉について法律上の定義は存在しないと解されます。
・安部和彦「相続税調査であわてない名義財産の税務(第3版)」中央経済社(2021年2月20日)p86より、一般に、預貯金や株式、不動産といった財産に関し、名義人と真実の所有者とが異なる場合のその財産をいう、と定義づけられています。
名義預金の定義
・名義預金という言葉について法律上の定義は存在しないと解されます。
・安部和彦「相続税調査であわてない名義財産の税務(第3版)」中央経済社(2021年2月20日)p88より、名義預金は被相続人が自ら稼得(かとく)した資金を元手に、銀行や郵便局等において被相続人以外の名義(多くの場合その配偶者、子又は孫)で預貯金を開設することによって生じる、と定義づけられています。
名義預金の税務調査については贈与税の除斥期間や相続税基礎控除範囲や相続税率と贈与税率が絡み合う攻防となると解されます
税務調査において
・当該相続人名義の預金は被相続人の名義預金ではないのかという指摘
・被相続人からの当該不明出金と相続人口座への不明入金は贈与ではないのかという指摘
が発生した場合、納税者の主張の攻防は下記となります。
・相続開始から6年以内の場合、正確には当該贈与日に関するの法定申告期限から6年以内の場合(ただし、7年前に偽りその他不正の行為が存在する場合は7年)は下記の攻防が発生します。
〇相続税の基礎控除や相続税率と贈与税率を検討すると名義預金としたほうが納税者が有利となる場合
〇相続税の基礎控除や相続税率と贈与税率を検討すると贈与としたほうが納税者が有利となる場合
・相続開始から6年超の場合下記の攻防が発生します。
〇贈与税の除斥期間は6年であることから贈与と主張することが納税者が有利となる
ただ、相続税の税務調査官は基本的に名義預金と主張してくると解されます、理由は下記となります。
・贈与が存在したかどうかを明らかにすること、決着をつけることが難しい
・相続税の調査官であるため贈与税ではなく相続税の修正事項を狙っている
現在の世の中は様々な取引がデータとして残る傾向にありますので何かのデータにより突合されて「使途不明出金=家事費家庭費生活費でごまかして結論付けるやり方」は通用しなくなると解されます
相続税の預金においてもう一点大きな論点が存在します。それが使途不明出金となります。
・使途不明出金=生活費として消費されているのであれば消費として問題とならない
・使途不明出金=預金が他の財産に変化している場合、名義預金となっている場合、相続人にわたっている場合は問題
となります。使途不明出金についての過去と現在の見解は下記となります。
・過去は、預貯金から多額の現金を引き出し、現金取引で消費されてしまえば痕跡は残らず家事費家庭費生活費でごまかすことも可能であったかもしれません。
・しかし現在は、様々なデータが電子化されて保存しているため、何らかの保存資料により突合される可能性が高まってきております。
そこで、相続発生前に使途不明出金を明らかにしておくことが有意義であり、被相続人に対して生前から聞き取りして明らかにしておくことが最も効果的と解されます。
上記を踏まえた弊所のコンセプトは時流に乗っていると自負しております
上記の記述内容が、弊所の事業コンセプトに至った根本的な理由となります。