成年後見人制度が財産を引き継ぐことの障害となった事例
認知症の親が相続人となり、亡き配偶者の遺産を相続するケースは今後たくさん起こりえるでしょう。ある家族は、認知症の父と子供二人で、母親の預貯金を相続することになりました。銀行に「認知症のお父さんは相続が難しい」と言われたので、子供はうながされるまま成年後見人となりました。成年後見人になると「財産に関わる全ての法律行為の代理権」「日常生活に関する行為を除くすべての行為の同意見・取消権」が与えられます。前者についてその子供は「父の了解を得れば、家族のためにお金を使える」と解釈してしまいました。
遺産相続も暦年贈与も自由が利かなくなる
しかし実際は、後見人の役割は「判断能力が低下している父の代わりに財産を守る」ことでした。母の遺産相続の際、父の「俺はいらない」の言葉を受けて、子供2人で分配しようとすると、後見人を監督する家庭裁判所に指摘され法定相続分に従わざるを得なくなりました。また「暦年贈与」も認められず、どちらも「判断能力が低下している以上、その判断ができない」という理由です。
成年後見人になるメリット・デメリット
メリット
①本人が交わした契約を取り消せる
判断能力の低下で、不当な契約をしてしまった場合、これを取消す権利があります。
②本人のための費用を本人の金融機関に口座から下ろせる
病院の治療代、外食代、医療代など、本人が使う費用は、金融機関の口座から下ろすことが出来ます。
③本人の財産の出費が多い場合、その出費の調整ができる
財産の管理を行ううえでは、収支のバランスを整えることが大切です。あまりにムダな生命保険の解約などができます。
④本人のための各種契約を交わすことができる
必要とされる契約を代理することができます。
デメリット
①生前贈与ができない
本人の財産を守るための制度のため、生前贈与は認められません。途中まで実施していても打ち切りです。
②家族のための費用の引出しができない。
過去に了解を得ていても、家族のために費用を下ろすことはできません。一緒に外食しても、認められるのは、本人の費用のみです。
③遺産相続は法定相続分のみ
遺産相続は「法定相続分にしたがう」「相続人同士の話し合いで決める」の方法がありますが、後者はできなくなります。
④一度なったらやめられない
成年後見人になったらやめることはできません。
以上、成年後見人について解説させていただきました。不明点やご質問があれば、京都の相続専門税理士である田中税理士事務所にお問合せください。