(2025年5月18日作成)
結論
・事務年度令和6年7月1日~令和7年6月31日である現在は、主としてとして令和4年発生分、続いて令和3年分あたりの調査が発生していると予測されます。
・根拠は、税理士武田秀和書籍及び国税庁発表資料となります。
・所得税・法人税・消費税と異なり相続税は納税者を泳がすメリットは乏しいことから5~7年前発生相続について調査が発生することは少ないと解されます。
・総合すると相続が発生して4年程度経過すれば相続税調査が発生することは少ないと言い換えることが可能と解されます。
以下で詳細を記述します。
今現在は、いつ頃発生した相続についての税務調査が発生しているのか
事務年度令和6年7月1日~令和7年6月31日である現在は、主としてとして令和4年発生分、続いて令和3年分あたりの調査が発生していると予測されます。
根拠は税理士武田秀和書籍及び国税庁発表資料となります
・税理士武田秀和書籍によれば、国税庁発表資料において調査事務年度に対する調査対象分が明記されているという記述があり、調べたところまさにその通りであったため、表にまとめました。
・しかしながら原因は不明ですが、令和2年12月発表分より当該明記の文言が消えております。
・しかし、当該法則性がそのまま変更されていないと仮定するのであれば、現在行われている調査対象分を推測した結果としては本ページの冒頭の推測となります。
下記でまとめます。
武田秀和「相続税調査はどうおこなわれるか」税務経理協会(令和3年8月30日)p16-p18より
相続税を扱う者にとって、かかわった申告書が調査の対象となる年分に該当するかどうかは大きな関心事です。かつては、申告書を提出してから2年後、3年後に調査がやってくるともいわれていました。なぜなら、申告期限が相続開始を知った日から10か月であることと、国税庁の事務年度が7月から翌年6月までであること等から調査の事務年度と相続開始の年が変則的になっていたからです。一時、相続税の調査対象年分は国税局による多少のばらつきはありましたが、近年統一されています。
相続税の調査状況の文言を分析しますと、この数年で調査対象年分が変化していることがわかります。例えば、平成25事務年度の相続税の調査状況では「相続税の実施調査については、平成23年中及び平成24年中に発生した相続を中心に・・・」とあります。平成23年及び平成24年中に発生した相続事案を全て調査しているように読み取れます。ところが平成24事務年度の相続税の調査状況でも「相続税の実地調査については、平成22年中及び平成23年中に発生した相続を中心に・・・」とあり、平成23年中に発生した事案が2年にわたって調査されているようです。しかし、実際は平成24事務年度の調査対象は平成22年6月1日~平成23年5月31日までの間に相続が開始した事案を調査し、平成25事務年度は平成23年6月1日から平成24年5月31日までに相続が開始した事案を調査していました。つまり相続開始が年の5月末日で区切られていたのです。これでは、納税者や税理士にはわかりません。また課税の現場である税務署でも事務手続きが煩雑となる原因でもありました。
平成26事務年度の相続税の調査状況から「相続税の実地調査については、平成24年に発生した相続を中心に…」と表現を変えています。つまり、この年分から相続開始がその年の1月1日から12月31日までの事案を調整することとしたものです。調査対象年分が暦年となったことから、申告した事案が調査対象年分に該当するかどうかの判断が明確になりました。2021(令和3)事務年度は2019(令和元年)1月1日から12月31日までの間に相続開始があった事案が調査対象となっています。ただし、相続税の申告件数及び申告内容は税務署により、また、年によりばらつきはあります。調査対象年分から外れたとしても、翌年に繰越されて調査となる可能性があります。ゆめゆめ油断するなかれです。
発表資料 | 発表月 | 発表機関 | 発表文言 | 調査事務年度 | 調査対象分 | 相続開始期間 |
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平成23事務年度における相続税の調査の状況 | 平成24年11月 | 国税庁 | 相続税の実地調査については、平成21年中及び平成22年中に発生した相続を中心に、 | 平成23年7月1日~平成24年6月30日 | 平成21年発生分及び平成22年分 | 平成21年6月1日~平成22年5月31日 |
平成24事務年度における相続税の調査の状況について | 平成25年11月 | 国税庁 | 相続税の実地調査については、平成22年中及び平成23年中に発生した相続を中心に、 | 平成24年7月1日~平成25年6月30日 | 平成22年発生分及び平成23年分 | 平成22年6月1日~平成23年5月31日 |
平成25事務年度における相続税の調査の状況について | 平成26年11月 | 国税庁 | 相続税の実地調査については、平成23年中及び平成24年中に発生した相続を中心に、 | 平成25年7月1日~平成26年6月30日 | 平成23年発生分及び平成24年分 | 平成23年6月1日~平成24年5月31日 |
平成26事務年度における相続税の調査の状況について | 平成27年11月 | 国税庁 | 相続税の実地調査については、平成24年に発生した相続を中心に、 | 平成26年7月1日~平成27年6月30日 | 平成24年発生分 | 平成24年1月1日~平成24年12月31日 |
平成27事務年度における相続税の調査の状況について | 平成28年11月 | 国税庁 | 相続税の実地調査については、平成25年に発生した相続を中心に、 | 平成27年7月1日~平成28年6月30日 | 平成25年発生分 | 平成25年1月1日~平成25年12月31日 |
平成28事務年度における相続税の調査の状況について | 平成29年11月 | 国税庁 | 相続税の実地調査は、平成26年に発生した相続を中心に、 | 平成28年7月1日~平成29年6月30日 | 平成26年発生分 | 平成26年1月1日~平成26年12月31日 |
平成29事務年度における相続税の調査の状況について | 平成30年12月 | 国税庁 | 相続税の実地調査は、平成27年に発生した相続を中心に、 | 平成29年7月1日~平成30年6月30日 | 平成27年発生分 | 平成27年1月1日~平成27年12月31日 |
平成30事務年度における相続税の調査等の状況 | 令和元年12月 | 国税庁 | 相続税の実地調査は、平成28年に発生した相続を中心に、 | 平成30年7月1日~令和元年6月30日 | 平成28年発生分 | 平成28年1月1日~平成28年12月31日 |
令和元事務年度における相続税の調査等の状況 | 令和2年12月 | 国税庁 | 文言消える | 令和元年7月1日~令和2年6月30日 | 平成29年発生分と推測 | 平成29年1月1日~平成29年12月31日と推測 |
令和2事務年度における相続税の調査等の状況 | 令和3年12月 | 国税庁 | 文言消える | 令和2年7月1日~令和3年6月30日 | 平成30年発生分と推測 | 平成30年1月1日~平成30年12月31日と推測 |
令和3事務年度における相続税の調査等の状況 | 令和4年12月 | 国税庁 | 文言消える | 令和3年7月1日~令和4年6月30日 | 平成31年/令和元年発生分と推測 | 平成31年1月1日~令和元年12月31日と推測 |
令和4事務年度における相続税の調査等の状況 | 令和5年12月 | 国税庁 | 文言消える | 令和4年7月1日~令和5年6月30日 | 令和2年発生分と推測 | 令和2年1月1日~令和2年12月31日と推測 |
令和5事務年度における相続税の調査等の状況 | 令和6年12月 | 国税庁 | 文言消える | 令和5年7月1日~令和6年6月30日 | 令和3年発生分と推測 | 令和3年1月1日~令和3年12月31日と推測 |
令和6事務年度における相続税の調査等の状況 | 令和7年12月予定 | 国税庁 | 文言消えている予定 | 令和6年7月1日~令和7年6月30日予定 | 令和4年発生分と推測 | 令和4年1月1日~令和4年12月31日と推測 |
(表1)相続税調査事務年度と調査対象年分の対応関係を国税庁報道から推測まとめ表20250518
所得税・法人税・消費税と異なり相続税は納税者を泳がすメリットは乏しいことから5~7年前発生相続について調査が発生することは少ないと解されます
下記はあくまで弊所の私見となります。
・納税者が偽りその他不正の行為を行っていると、最大7年間の処分を税務署は行うことが可能です。
・過去の処分を行うほど、延滞税などの加算税を税務署は高額に賦課処分できることとなります。
・そうすると所得税・法人税・消費税のような連年において発生する可能性が高い税目については税務署は「敢えて納税者を泳がす」ということもあり得るかもしれません。
・しかし相続税については単年において発生する税目であるため税務署が納税者を泳がすメリットがない、ほとんどないと推測されます。
したがって、
・偽りその他不正の行為がない場合において税務署が処分可能な年数は5年前であることから敢えて5年前まで見逃す、泳がすことにメリットがない
・偽りその他不正の行為がある場合は7年前までであるが、同様にメリットがない
となります。
総合すると相続が発生して4年程度経過すれば相続税調査が発生することは少ないと言い換えることが可能と解されます
総合すると下記となります。
・調査事務年度に対応する調査対象分という第一のフィルターがあり、ここを通過すればまずは調査対象から外れると言ってよいのかもしれません。
・しかし、法的には5~7年前までは調査の可能性があるが少ないと言ってよい、そうすると相続が発生して4年程度経過すれば相続税調査が発生することは少ないと言い換えることができるかもしれない。
まとめ
・事務年度令和6年7月1日~令和7年6月31日である現在は、主としてとして令和4年発生分、続いて令和3年分あたりの調査が発生していると予測されます。
・総合すると相続が発生して4年程度経過すれば相続税調査が発生することは少ないと言い換えることが可能と解されます。