(2023年8月30日作成)
本ページにおいては、相続発生時において、土地に関する情報を収集、分析したい場合に役立つ情報を記述しております。
概要
被相続人の土地、建物、いわゆる不動産の所有状況については、毎年4月に郵送される固定資産税課税明細書納税通知書で捕捉、確認可能となります。ただ、非課税の山林等が未掲載の場合もありますので注意することになります。
固定資産税課税明細書納税通知書には、所有者の氏名、土地建物の所在地住所、面積、土地建物の種類等、必要な情報が詰まっております。
次に、固定資産税課税明細書納税通知書を利用して、登記事項証明書(旧登記簿謄本)を取得します。
登記事項証明書(旧登記簿謄本)の取得方法は、法務局の窓口へ訪問する方法、登記・供託オンライン申請システム登記ねっとを利用する方法があります。登記ねっとの利用を、利便性の面、コスト費用面から推奨します。
次に、国税庁のホームページにおいて倍率方式の土地であれば倍率表を取得し、路線価方式の土地であれば路線価図を取得します。なお倍率方式は土地の地形による減額評価計算がありません。
次に、路線価方式における土地の地形による減額に利用可能な資料を取得します。検討していく順番は、公図、地積測量図、建物図面、ゼンリン住宅地図、となります。
以上が土地に関する資料を収集する全体的な流れとなります。下記で詳細を説明します。
固定資産税課税明細書納税通知書は捨てずに保存お願いいたします
不動産を所有しておられる方にとっては、毎年4月に郵送される固定資産税課税明細書納税通知書の存在はご存じと思います。しかしこれまでは、同封されている「納付書」の方が関心が高かったと思われます。なぜなら、当該納付書を用いて期限までに納付しなければならないからです。固定資産税課税明細書納税通知書については、計算根拠であるもののその根拠を見たところでよくわからず、国が計算しているのは間違いないだろうということであまり気にされない方も多いでしょう。
そして最大の疑問は「固定資産税課税明細書納税通知書」は毎年保存すべきか、捨ててもよいのか、と思われます。回答は、基本的には使い道がなく捨てても良いですが、相続発生年については存在すれば役に立つ、という資料となります。そのため相続専門税理士としては捨てずに保存いただける方がありがたい資料となります。
被相続人の固定資産税課税明細書納税通知書を参考に、登記事項証明書(=履歴事項全部証明書=旧登記簿謄本)及び公図等を申請取得する
まずは混乱を避けるため、用語の整理を行いましょう。
「登記簿謄本」は帳簿に登記情報を手書きで記載していたときに使用していた名称です。現在の正式名称は「登記事項証明書」ですが、以前の名残から「登記簿謄本」と呼ぶことがあります。
登記事項証明書には下記の種類があります。
・現在事項証明書(重要性が低いので無視しましょう)
・履歴事項全部証明書
・閉鎖事項証明書(重要性が低いので無視しましょう)
現在事項証明書は、現在の有効な登記情報が記載されている書類です。履歴事項全部証明書は、現在有効な登記情報に、過去に変更された登記情報を加えたものです。
一般的に、登記簿謄本=登記事項証明書=履歴事項全部証明書、という意味で使用されるケースが多いですのでご注意ください。
当該資料を取得する方法として
・法務局を訪問する方法
・オンラインシステム登記ねっとを利用する方法
が存在します。
法務局の利用方法について
法務局とは、様々な事務処理を行っているなかで、不動産登記情報を処理している機関となります。
・全国8か所にある法務局
・42か所にある地方法務局、その出先機関として支局と出張所があります。
京都で言えば、まず京都地方法務局の法務局が荒神口あり、不動産登記管轄区域ごとに出張所、支局が存在します。
ここで、法務局に訪問して登記簿謄本=登記事項証明書(=履歴事項全部証明書)を取得する場合のポイントをお伝えしたいとお思います。
・物件の所在地によって法務局には管轄がありますが、他の管轄の物件であっても登記簿謄本の取得が可能です。つまり物件所在地の法務局にわざわざ行く必要はありません。なお、現在においてもデータ化されていない登記簿については、物件の管轄の法務局でないと取得できないケースもあるようです。
・デメリットは、最寄りの法務局とはいうものの営業時間内に訪問しなければなりません。混雑具合に影響されます。発行手数料が高いです。
・メリットは、窓口の方に質問できたり、エスコートを受けたりできます。
登記ねっとの利用方法について
登記ねっととは?
登記ねっとは愛称で、正式には「登記・供託オンライン申請システム」と言います。平成23年から法務省によって運営されており、オンライン上で登記に関わる申請、請求ができます。各種機能サービスがいくつかあるのですが、今回は「かんたん証明書請求」のみ理解していただければよいと思われます。
・かんたん証明書請求←不動産の登記事項証明書請求はこれを利用する
・供託かんたん申請
・かんたん登記申請
・商号調査
・申請用総合ソフト
ここで、登記ねっと利用のポイントをお伝えしたいと思います。
・デメリットは、IDパスワードの発行取得管理が必要な点、基本的なパソコン操作スキルが必要なこと、操作方法やルールについて基本的には独学で、疑問があれば電話による操作サポートを受けることになります。
・メリットは、窓口に訪問する時間コストや窓口の混雑による影響の時間コストの削減、発行手数料コストの削減、などが存在します。
法務局窓口、オンライン登記ネット、メリット、デメリット | 法務局窓口 | オンライン登記ねっと |
登記事項証明書の発行手数料 | 600円 | 送付500円/窓口交付480円 |
公図、地積測量図、建物図面の発行手数料 | 450円 | 送付450円/窓口交付430円 |
利用ID、パスワードの発行 | 不要 | 必要 |
窓口への訪問する時間コスト | 必要 | 不要 |
発行手続きサポート | 窓口で質問できる、ただ混んでいる場合もあり | まずは自分で調べ、電話サポートもあり |
(表1)法務局窓口、オンライン登記ネット、メリット、デメリット
登記ねっと( 登記・供託オンライン申請システム)のアカウントを取得しましょう
登記ねっとと検索・一番上位をクリック、かんたん証明書請求をクリック、申請者IDをお持ちでない場合をクリック、利用規約に同意するをクリック、申請者情報新規入力を行ってください。
登記ねっとを利用して登記事項証明書を取得する
まず、固定資産税課税明細書納税通知書から「住所の正確な地番」を確認しましょう。
・登記ねっとと検索・一番上位をクリック、かんたん証明書請求をクリック、申請者ID・パスワードを入力、登記事項証明書 (土地・建物)/地図・図面証明書をクリック、オンライン物件検索を使う、種別・土地、所在・都道府県・所在選択、地番・家屋番号において地番を入力、検索、確定、登記事項証明書、全部事項、共同担保目録・全部事項、供託目録・全部事項、通数・1、次へ、次へ、確定、確定、送信実行、、、、、
国税庁のホームページから倍率表又は路線価図を取得する
相続税法において土地評価はまず大きく分けて二つあります。
・路線価のある地域
・路線価のない地域=倍率地域
があります。
・路線価のある地域=路線価図
・路線価のない地域=倍率表
を国税庁のホームページから取得しましょう。無料です。
倍率方式の場合の土地の固定資産評価額=課税明細書における「当該年度価格(評価額、価格、等)」であり課税標準額ではないことにご注意ください
固定資産税課税標準額と固定資産税評価額(=価格)との違いにご注意ください。
・建物の場合、固定資産税課税標準額と固定資産税評価額は通常一致します。
・土地の場合には、固定資産税課税標準額と固定資産税評価額は異なる場合が多いです。
小規模住宅用地の場合は固定資産税評価額×1/6=固定資産税課税標準額となり、一般住宅用地の場合は固定資産税評価額×1/3=固定資産税課税標準額となり、また土地に関する負担調整率、などの理由により、土地の固定資産課税標準額は、土地の固定資産税評価額よりも非常に低い額となっております。軽減措置計算前の高い方の金額、とご理解ください。
下記において、土地の地形による減額評価のために、公図、地積測量図、建物図面、ゼンリン住宅地図の取得について解説いたします。なお、倍率地域については土地の地形による減額評価は存在しないので、土地の地形に関する資料は不要です。ただ、相続登記において公図の確認が必要な場合もあります。
被相続人の固定資産税課税明細書納税通知書を参考に、公図を申請取得する
公図の概要を下記で説明します。
・公図とは、日本の土地の地番や形状、道路、水路などを示している地図で、土地の大まかな位置や形状がわかります。
・出力縮尺の記載があれば、間口距離の実測無しで、公図から距離を算出可能となります。
・出力縮尺が縮尺不明の場合は、最も実測しやすい間口距離のみ実測すれば、あとは縮尺割合を利用して、公図から距離を算出可能となります。
・公図が存在しないケースは少ないと解されます。
公図からの距離の算出方法は別ページで解説いたします。
登記ねっとによる公図取得手順
・登記ねっとと検索・一番上位をクリック、かんたん証明書請求をクリック、申請者ID・パスワードを入力、登記事項証明書 (土地・建物)/地図・図面証明書をクリック、オンライン物件検索を使う、種別・土地、所在・都道府県・所在選択、地番・家屋番号において地番を入力、検索、確定、地図証明書(=公図)、通数・1、次へ、次へ、確定、確定、送信実行、、、、、
となります。
被相続人の固定資産税課税明細書納税通知書を参考に、地積測量図の存在有無を確認する、存在すれば取得する
地積測量図の概要を下記で説明します。
・地積測量図とは、土地家屋調査士が測量した結果を図示したもので、面積、形状、境界のポイント、辺長、求積の方法、方位、縮尺なども合わせて明示されます。
・地積測量図は、土地を分割する分筆登記や、複数の土地をまとめる合筆登記、登記簿の土地の面積を修正する地積更正登記などの登記を行う場合に、添付する必要がある図面です。つまり、これまでに分筆登記や合筆登記、地積更正登記などを行ったことのない土地の地積測量図は、法務局に存在しません。
・公図に比べて地積測量図の寸法精度が高いため、正確な寸法を取得可能となります。
登記ねっとによる地積測量図取得手順
・登記ねっとと検索・一番上位をクリック、かんたん証明書請求をクリック、申請者ID・パスワードを入力、登記事項証明書 (土地・建物)/地図・図面証明書をクリック、オンライン物件検索を使う、種別・土地、所在・都道府県・所在選択、地番・家屋番号において地番を入力、検索、確定、図面証明書(=地積測量図)、請求する図面の種類・土地所在図/地積測量図、通数・1、次へ、次へ、確定、確定、送信実行、、、、、
被相続人の固定資産税課税明細書納税通知書を参考に、土地の寸法を知るために建物図面の存在有無を確認する、存在すれば取得する←弊所のおすすめするテクニック
建物図面の概要は下記です。
・建物図面とは、建物の形状および敷地との位置関係を示した図面です。建物を新築した場合の表題登記、増改築して、床面積、構造の変更登記を申請するときなどに作成し、法務局に提出します。
・表題登記(建物表示登記)申請に建物図面の添付が必要となったのは1960(昭和35)年4月1日からで、それ以降に建築された建物については、原則として建物図面があります。それより前については、建物図面がないケースが多く、昭和35年4月以降でも、昭和40年前後までは建物図面がないケースがあるようです。
・更地ではなく、建物が立っている土地については、地積測量図が無くても建物図面が存在する場合があり、その場合は、土地の寸法の記載があることを期待して、建物図面を取得することを推奨いたします。
・建物図面において土地の寸法が判明すれば、公図で算出する方法に比べて寸法精度が高いと解されます。
登記ねっとによる建物図面取得手順
・登記ねっとと検索・一番上位をクリック、かんたん証明書請求をクリック、申請者ID・パスワードを入力、登記事項証明書 (土地・建物)/地図・図面証明書をクリック、オンライン物件検索を使う、種別・建物、所在・都道府県・所在選択、地番・家屋番号において家屋番号を入力、検索、確定、図面証明書(=建物図面)、通数・1、次へ、次へ、確定、確定、送信実行、、、、、
被相続人の固定資産税課税明細書納税通知書を参考に、ゼンリン住宅地図取得する←弊所のおすすめするテクニック
ゼンリン住宅地図の概要は下記です。
・ゼンリン住宅地図とは、株式会社ゼンリンが作成する資料で、一軒一軒、一戸一戸の建物名称・居住者名や番地を大縮尺の地図上に詳しく表示されているものです。
・ゼンリン住宅地図の取得方法としてはまず、都道府県市町村のいずれかの図書館でコピーできる可能性があります。京都であれば京都府立図書館で閲覧、コピー複写が可能です。
・もう一つの方法は、ゼンリン住宅地図プリントサービス、で最寄りのコンビニでプリントアウト可能です。縮尺は、1/1,500相当で、価格は1枚/400円(税込)です。
・ゼンリン住宅地図において土地の寸法を算出する方法は、公図で算出する方法に比べて寸法精度が高いと解されます。
まとめ
相続税の申告において、土地に関する資料の収集は以下にまとめられます。
・固定資産税納税通知書課税明細書の保存
・登記事項証明書の取得
・公図の取得
・地積測量図、建物図面、ゼンリン住宅地図のいずれかの取得
以上が必要と解されます。