(2023年7月7日作成)

あくまで弊所の経験のみに基づく独自の見解であることにご留意ください

あくまで弊所独自の見解です。

・全ての税理士が相続税に関して精通しているわけではありません。
・まず税理士試験において相続税を受験合格しているかどうか、という論点があります。
・次に実務経験として相続税の実務経験が豊富であるかどうか、という論点があります。
・サッカー選手で例えますと、法人税業務及び所得税業務はフィールドプレイヤーで、相続税業務はキーパーに例えられます。
・税理士は、法人税業務及び所得税業務は1件でも受注すれば毎年経験値が上げることが可能ですが、相続税業務は毎年案件を継続的に獲得しなければスキルを上げることができません。
・昭和から平成12年(2000年)くらいまでのインターネットが普及していない時代において、税理士が相続案件に触れる機会は少なかったと思われます。法人税及び所得税顧問先関連の相続案件が数年に1件受注するかどうか、だったのではないでしょうか。
・平成27年(2015年)の基礎控除改正までは相続税の課税対象者が少なかったと思われます。
・これらのウラ事情を考慮すれば相続税特化ホームページサイトにおいて相続税業務経験をアピールされている税理士に依頼することはまず間違いではないと思われます。

全ての税理士が相続税に関して精通しているわけではありません

「税理士」と聞くと、「税金のことなら何でも知っているイメージ」かもしれません。しかし、本当のことを申し上げますと、やはり相続税業務に常に触れている税理士、相続案件の経験が多い税理士とそれ以外の税理士では差が発生します。

ネット記事や書籍等で、医師も内科医、外科医、眼科医のように専門分野があるから税理士も専門があるんだ、というような文言を散見します。ただ、ここで思うのが、「医師も内科医、外科医、眼科医、、、」という文言ですが、医師にはその分野に関する内科医、外科医、眼科医、という名称があるので名乗りやすいじゃないか、ということです。税理士も、「法人税理士」「所得税理士」「相続税理士」という名称が存在するのであれば、きちんとそのように名乗ると思われます。つまり「税理士として名乗るしかないから税理士と名乗っています。相続税が得意とは言っていません」ということもあるかもしれません。

その点、現代においては自身のホームページで相続専門税理士と名乗ること、名刺に「相続税分野に詳しいです」と名乗ること、が一般的になってきていますので、納税者、依頼人に誤解させないという意味で、そのように名乗ることは良いことかもしれません。

つまり、自分の得意分野と不得意分野を適切に明示してくれる税理士は良い税理士とは少なくとも言える、と解されます。

まず税理士試験において相続税を受験合格しているかどうか、という論点があります

税理士試験は原則として税法を3科目合格して税理士になる、という制度です。しかし、その3科目において相続税は必須科目ではありません。税理士は現在約8万人弱存在しますが、相続税法を合格している税理士はそのうちの何%かということになります。相続税法の合格は難関とされていますので、受験合格されている税理士はすばらしいと思います。

次に実務経験として相続税の実務経験が豊富であるかどうか、という論点があります

次に、税理士試験で相続税法は合格していないけれど、税理士事務所勤務、税理士法人勤務で、相続税案件を数多くこなした経験を所有している場合があると思います。反対に勤務先が相続案件を全く受注しない場合は、経験を積むことができないこととなります。相続税の実務経験が豊富だけれども相続税業務は苦手だというケースは考えにくいことから、相続税案件の経験が豊富な税理士に依頼することは重要と考えられます。

サッカー選手で例えますと、法人税業務及び所得税業務はフィールドプレイヤーで、相続税業務はキーパーに例えられます

ここからが裏事情のような話になります。サッカー選手は、ディフェンダー・ミッドフィルダー・フォワードというフィールドプレイヤーとキーパーに分類できます。ただ、サッカー選手でもフィールドプレイヤーとキーパーは全く別の競技ではないでしょうか。キーパーはむしろ、バレーボールやバスケットボールに近い気がします。反対にフィールドプレイヤーですが、サッカー選手であれば、ディフェンダーがフォワードをこなすことはそれなりに可能と思われます。実際に小学生の時はフォワードだったがプロではディフェンダーというサッカー選手はたくさんいるでしょう。そうなると、いくら「プロサッカー選手」であってもフィールドプレイヤーにキーパーをこなすように依頼することは困難となります。

ここで税理士ですが、法人税業務と所得税業務は割と似ています、確かに最後の税金計算は全く異なりますが、少なくとも会計処理の段階においてそこまで大きな差異はありません。また、所得税案件を依頼されている個人事業主から、知り合いの法人の税務顧問依頼を受注するという現象は珍しくありません。以上から税理士が法人税業務及び所得税業務を経験すること、受注することはそこまで難易度が高い話ではありません。

一方で相続税業務ですが、法人税業務と所得税業務との相関性はほぼありません。相続税業務のスキルは相続税業務で磨くしかありません。また後述しますが、法人税業務と所得税業務をこなしていれば相続税案件が受注できる相関性はそこまで強くありません。

税理士は、法人税業務及び所得税業務は1件でも受注すれば毎年経験値が上げることが可能ですが、相続税業務は毎年案件を継続的に獲得しなければスキルを上げることができません。

法人税案件及び所得税案件と相続案件の決定的な違いの一つは「毎年の継続業務であるかどうか」が挙げられます。法人税業務は毎年1回決算月があり、所得税業務は毎年3/15申告期限となる継続業務です。一方、相続税案件はその受注した案件は相続発生日から10か月以内に一度申告すれば完了となります。またその依頼いただいた方から、別の相続案件の依頼が発生する相関性も強くありません。以上から、相続案件を数多く受注するためには、相続案件を数多く集客するための施策が必要ということになります。

昭和から平成12年(2000年)くらいまでのインターネットが普及していない時代において、税理士が相続案件に触れる機会は少なかったと思われます。法人税及び所得税顧問先関連の相続案件が数年に1件受注するかどうか、だったのではないでしょうか。

現在においても、相続専門税理士、相続に強い税理士、としてアピールしている税理士はまだまだ少ないと考えます。しかし、平成12年(2000年)以前のネットが普及していなかった時代に、相続専門税理士、相続に強い税理士、とアピールしていた税理士は、全国でほとんどいなかったのではないでしょうか。仮にその時代に相続専門税理士や相続に強い税理士とアピールしている税理士がいたとしても、まさにネットが無いために、捕捉、集計できなかったのではないでしょうか。また、2002年以前は税理士の広告が禁止されておりました。

以上から推測できることは、ネットが普及する前の税理士は、法人及び所得税顧問先関連の相続案件が数年に1件発生するような頻度の受注だったのではないかと推測されます。

平成27年(2015年)の基礎控除改正までは相続税の課税対象者が少なかったと思われます

平成27年(2015年)の基礎控除改正までは、多額の基礎控除がありました。また相続人の数も多かったと思われます。そうなると、上記における数年に1度たまたま受注した相続案件ではあるが、結果的に相続税は非課税であり相続税申告が不要であったケースが多かった、と推測されます。そうなると、税理士が相続税申告のスキルを上げる機会が失われたと推測されます。

まとめ

相続税申告を依頼する税理士を探しておられる方へは下記をお伝えします。

・税理士、であれば全員の税理士が相続税に詳しいわけではない、というのは事実です。
・インターネットで相続専門税理士、相続に強い税理士、とPRしている税理士を検索して探すことは間違ってはいないと考えられます。