(2024年2月2日作成)

結論

・隠蔽(いんぺい)仮装があった場合に重加算税が賦課されると国税通則法に明記されています。国税通則法は、国税についての基本的事項及び共通事項について定めた法律であるので、所得税・法人税・相続税において共通して適用されます。
・しかし、隠蔽(いんぺい)仮装がどのような行為であるかは、事務運営指針が存在するもののはっきりしておらず、様々な議論や研究がされています。
・さらに、事業取引に関する税法である所得税及び法人税と相続税では隠蔽(いんぺい)仮装についての考え方が異なるのではないかという指摘も存在します。

隠蔽(いんぺい)仮装があった場合に重加算税が賦課されると国税通則法(所得税・法人税・相続税において共通)に明記されています。

相続税の加算税についてはこちらのページをご参考ください。

相続税と加算税

つまり、納税義務があるにもかかわらず申告期限までに申告書を提出しなければ無申告加算税が賦課されます。申告期限までに申告書は提出されているが、過少申告であった場合には過少申告加算税が賦課されます。

さらに、無申告加算税が賦課される納税者が隠蔽(いんぺい)仮装を伴う無申告者であった場合には無申告加算税に代えて重加算税が賦課されます、過少申告加算税が賦課される納税者が隠蔽(いんぺい)仮装を伴う過少申告者であった場合には過少申告加算税に代えて重加算税が賦課されます。

これらについては、国税通則法という法律で明記されています。

・国税通則法68条1項
①過少申告加算税の規定に該当する場合
②納税者が
③その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し又は、仮装し、
④隠蔽し又は、仮装したところに基づき納税申告書を提出していた場合
⑤隠蔽し又は、仮装した部分に相当する税額につき、過少申告加算税に代えて35%の割合を乗じた重加算税が課される

と定義しています。

・国税通則法68条2項
①無申告加算税の規定に該当する場合
②納税者が
③その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し又は、仮装し、
④隠蔽し又は、仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、または法定申告期限後に納税申告書を提出していた場合
⑤隠蔽し又は、仮装した部分に相当する税額につき、無申告加算税に代えて40%の割合を乗じた重加算税が課される

と定義しています。

なお、調査通知後から税務調査の初日の前日までに自主修正申告すれば重加算税が回避可能という重要論点もお伝えいたします。

弊所は所得税及び法人税の税務調査専門税理士としても活動しております。こちらのページをご参考ください。

国税通則法第68条1項において調査通知後でも調査日の初日の前日までに修正申告すれば重加算税は回避できると定義づけられています – 税務調査の重加算税回避無申告解消専門全国対応京都の税理士 (tt-web.sakuraweb.com)

なお、調査通知後から税務調査の初日の前日までに自主修正申告すれば重加算税が回避可能というのは国税通則法による規定であるため、当然ながら相続税法についても適用されると解されます。

しかし、隠蔽(いんぺい)仮装がどのような行為であるかは、事務運営指針が存在するもののはっきりしていません

隠蔽(いんぺい)仮装が存在すれば重加算税が賦課されることは明確ですが、隠蔽(いんぺい)仮装がどのような行為を指すのであるかは明確ではありません。ただ、相続税及び贈与税の重加算税の取り扱いについて(事務運営指針)というものは存在しております。こちらのページをご参考ください。

 

よくある質問「うっかりミスと言い張れば重加算税が回避できるか」について

弊所は所得税及び法人税の税務調査専門税理士としても活動しております。うっかりミスと言い張れば重加算税が回避できるかどうかはこちらをご参考ください。

うっかりミスと言張れば重加算税賦課は回避できる? – 税務調査の重加算税回避無申告解消専門全国対応京都の税理士 (tt-web.sakuraweb.com)

つまりうっかりミスと言い張っても最終的に重加算税の可能性があります。

事業取引に関する税法である所得税及び法人税と相続税では隠蔽(いんぺい)仮装についての考え方が異なるのではないかという指摘も存在します

しかし弊所は、相続税の実地税務調査における重加算税賦課割合約14%というのは割合が低いと解しております。こちらのページをご参考ください。

相続税の重加算税賦課割合(相続税の実地調査事績より)

当該論点について、福原俊之「相続税・贈与税に係る重加算税賦課の一考察」p269において、重加算税の賦課要件の中核ともいえる「隠蔽又は仮装」の事実については、売上除外や二重帳簿の作成などがその典型例といえるが、相続税・贈与税においては、所得税や法人税のような事業に関する取引とは大きく異なり、いわば家庭内の話であることから、「隠蔽又は仮装」行為の認定に必要な帳簿書類や契約書等の証拠書類の存在が乏しく、ややもすると「相続財産であることはわかっていたが、失念して申告漏れとなった。」というような言い逃れがなされ、重加算税の賦課が困難となる事例が多く存在している。

とありました。つまりそれは言い訳が通用しやすい、からではないか、と思われます。ただ、当該論点について、弊所はまだ結論を導けておりません。

まとめ

隠蔽(いんぺい)仮装が存在すれば相続税の重加算税が賦課されることは国税通則法に明記がありますが、隠蔽(いんぺい)仮装の定義は明確ではありません。