(2024年2月7日作成)

結論

・あくまで弊所独自の見解ですが、相続税の税務調査において重加算税賦課に納得ができず納税者が国税不服審判所まで争えば約50%の確率で重加算税賦課が取り消される可能性があります。
・あくまで弊所独自の見解ですが、所得税及び法人税の税務調査において重加算税賦課に納得ができず納税者が国税不服審判所まで争って重加算税賦課が取り消される可能性は約15%の確率と算出しております。
・やはり、所得税及び法人税における重加算税賦課に対する考え方と相続税における考え方に違いが存在するのかもしれません。

下記で詳細を記述します。

あくまで弊所独自の見解ですが、相続税の税務調査において重加算税賦課に納得ができず納税者が国税不服審判所まで争えば約50%の確率で重加算税賦課が取り消される可能性があります。

まずはこちらを御覧ください。

国税不服審判所裁決要旨検索システムのキーワードを仮装として検索し年度別でまとめて相続税贈与税裁決を集計した表20240521

導出の過程は下記となります。

・平成19年以前の裁決事例を除外して年度別に検索して集計した理由
◎最高裁昭和62年5月8日判決、最高裁平成6年11月22日判決、最高裁平成7年4月28日判決、最高裁平成17年1月17日判決、最高裁平成18年4月20日判決が、隠ぺい、仮装の有無の判断について現在国が採用している判例であり、当該判例によって分析することが妥当すると税理士谷原誠は解説しています。当該考えを弊所は賛同しています。したがって、平成19年以前の公表裁決は現在採用している判断基準とは異なる恐れがあると判断し、除外しました。
◎隠ぺい、仮装の判断は、納税者の資料保存能力、集計能力が関係すると解され、パソコン、スマホ、ネット技術による影響も無視できないところ、それらが存在しない昭和、平成初期の裁決は時代錯誤であるため分析から除外することが妥当すると判断し、現在の状況と近似する平成20年以降の裁決の抽出を試みたためです。

弁護士税理士谷原誠の書籍「税務のわかる弁護士が教える税務調査における重加算税の回避ポイント」を参考とした重加算税を回避する方法についての弊所独自の考察

・裁決要旨検索システムにおけるキーワードを「仮装」とした理由
検索期間を平成20年1月1日から令和4年12月31日とし、キーワードを、「重加算税」「隠ぺい」「隠蔽」「仮装」とそれぞれ検索した結果は下記となりました。

◎キーワード「重加算税」→698件
◎キーワード「隠ぺい」→657件
◎キーワード「隠蔽」→187件
◎キーワード「仮装」→966件

「仮装」による検索結果の件数が最も多数となったため、「仮装」を採用しました。

・キーワード「仮装」+平成20年の暦年、平成21年の暦年、、、、と年度別にエクセルで集計しました。
・検索結果のうち、同一裁決と思われる裁決は集約して1件とカウントしました。
・上記の集約した件数を暦年ごとに集計しました。
・上記のうち、相続税及び贈与税裁決を抽出しました。
・抽出した相続税及び贈与税裁決ののうち、隠蔽(いんぺい)仮装を認めた裁決と認めなった裁決を区分集計しました。
・またそれぞれ、公表裁決、非公表裁決を区分集計しました。

以上が実際の算出過程となります。その結果

隠ぺい仮装の有無について争った相続税贈与税裁決のうち隠ぺい仮装は無かった=重加算税賦課が取消された割合=21件/43件=48.8%

と算出されました。つまり約50%となります。

あくまで弊所独自の見解ですが、所得税及び法人税の税務調査において重加算税賦課に納得ができず納税者が国税不服審判所まで争って重加算税賦課が取り消される可能性は約15%の確率と算出しております。

弊所は所得税及び法人税の税務調査専門税理士としても活動しております。こちらのページをご参考ください。

裁決要旨検索システムを利用した統計から算出した裁決で争った場合の重加算税賦課回避可能性は15%という弊所独自の見解 – 税務調査の重加算税回避無申告解消専門全国対応京都の税理士 (tt-web.sakuraweb.com)

国税不服審判所裁決要旨検索システムを利用した弊所独自の相続税贈与税裁決統計から気が付いた論点

国税不服審判所裁決要旨検索システムを利用した弊所独自の相続税贈与税裁決統計から気が付いた論点については、下記となります。

・国税不服審判所で争った相続税贈与税裁決は所得税及び法人税に比べて件数が少ない
・国税不服審判所で相続税贈与税裁決で争った場合の重加算税賦課回避可能性は約50%
・相続税贈与税裁決における国税不服審判所公表裁決で隠ぺい仮装を認めた裁決については公表された件数の方が非公表の件数に比べて大幅に少ない

となります。以下で詳細を記述します。

国税不服審判所で争った相続税贈与税裁決は所得税及び法人税に比べて件数が少ない

国税不服審判所で争った相続税贈与税裁決は所得税及び法人税に比べて件数が少ない点について、弊所の見解は下記です。

・そもそも相続税の税務調査の件数が少ない
・基本的に相続人は相続という出来事は静かに終えたいという願望があるところ、相続税において裁決まで争うことを好まない傾向があるのではないか。
・これまでは、相続税に不慣れな税理士が関与しているケースが多かったと解され、裁決まで争うというような誘導は少なかったのではないか。

となります。しかし、弊所の上記の推測で確実にお伝えできることは、「そもそも相続税の税務調査の件数が少ない」というデータに基づく見解のみです。

税目(所得税法人税相続税)ごとの実地調査・簡易な接触・非違割合・税理士関与割合・書面添付割合平均比較

国税不服審判所で相続税贈与税裁決で争った場合の重加算税賦課回避可能性は約50%

つまり、税務署が当然のように「重加算税を賦課する」と処分してきたにも関わらず、実は裁決で争えば半分は取り消されているという可能性があります。

これは、相続税において隠蔽(いんぺい)仮装の認定が困難、難しいという事実を表しているのでしょうか。

相続税贈与税裁決における国税不服審判所公表裁決で隠ぺい仮装を認めた裁決については公表された件数の方が非公表の件数に比べて大幅に少ない

当該論点ついての原因は不明です。あくまで弊所の私見ですが、

・国民は相続税という税金について理不尽であるという感情を有していると解されます。そこでさらに相続税において重加算税を課しているという事実をあまり公表したくないのではないか
・相続税の事案は、個別性が強いため「裁決のうち、法令の解釈・適用について先例性があると認められるものなどについては、審査請求人の正当な権利・利益が害されることのないよう十分に配意した上で公表する」という趣旨に反するものが多いのではないか

と解されます。

まとめ

相続税においては国税不服審判所で争えば5割の確率で重加算税が取り消される可能性があります。