(2023年8月27日作成)(2024年9月17日再編集)
結論
・相続税調査においては納税者側が不利であることがデータとして公表されています。
・書籍において税務署側は入念な事前準備及び下準備をしているとの記述があります。
・一方で、世間一般的な認識としては相続は相続発生後に税理士に相談するものであるという認識です。最大でも10カ月となります。
下記で詳細を記述します。
相続税調査においては納税者側が不利であることがデータとして公表されています。
下記のページをご参考ください。
税目(所得税法人税相続税)ごとの実地調査・簡易な接触・非違割合・税理士関与割合・書面添付割合平均比較
内容を改めてまとめますと下記となります。
・相続税の税理士関与割合85.9%、書面添付割合19.7%、実地税務調査の非違割合、83.4%となります。
・つまり、相続税申告については税理士関与割合が高く、書面添付割合も高いにも関わらず、実地税務調査が行われた場合の非違割合も高い、という結果となりました。
書籍において税務署側は入念な事前準備及び下準備をしているとの記述があります
武田秀和「相続税調査はどうおこなわれるか」税務経理協会(令和3年8月30日)より
p82より、実務上は形式基準にこだわることなく、多額な申告漏れが想定される事案から優先的に調査選定されます。実地調査の結果の項(第1章)で解説したように、調査対象となった相続税申告の80%以上に非違があります。多額の相続財産の申告漏れが把握されており、そのうちで約15%前後の割合で重加算税が賦課されている現実を見ると、調査選定される事案は相応の理由があり、職員の選定眼が的確であることの証左でもあります。
p83より、相続税調査の対象となるのは、根本的に相続税の申告書上に現れていない金融資産の把握です。この資産はまとめて「不表現資産」といいます。「表現」されていない資産を表に出して課税することが究極の目的です。そのため基本的に金融資産が多額な事案は多額な不表現資産も隠れているであろうと想定されます。また実際、そのような事例も多くあります。
p90より、相続税の申告書が提出されると、上記1の通り署内資料を収集し一通り取引機関を把握します。その後、被相続人名義のみならず納税義務者である相続人及び受遺者名義及び親族名義の取引状況を文書照会します。申告書の提出はないが相続税が課税されると推認される事案(無申告事案)についても同様に署内資料等に基づいて取引状況を照会します。
照会による取引期間は事案の軽重にもよりますが、照会日現在から遡って5年から10年間に及びます。照会対象期間が長期になればなるほど生前の相続税対策を含む金融資産の変動がよく把握できます。照会回答に基づいて申告審理し、調査対象事案を絞り込みます。
p133より、相続財産は土地等の評価誤りも多くありますが、これは実地調査で是正するほどのものではなく、通常は事後処理という机上処理で済まされます。相続税の実地調査により申告漏れと把握されるのは現金、預貯金等及び有価証券で50%です。つまり相続税の調査は、金融資産調査がすべてです。被相続人、相続人等及び家族親族の取引金融機関に臨場し、取引内容を念入りに調査します。相続税は、所得税や法人税の反面調査先である取引先はありません。関係会社の調査を除けば、銀行、信用金庫、証券会社等々金融機関調査がほとんどです。国税職員の調査能力は非常に高いですが、相続税調査を担当する調査官は必然的に金融機関等に対する調査経験及び金融関連知識が豊富となります。
p147より、近年の相続税調査のメインターゲットは名義財産であることはすでに述べました。課税庁が預貯金等の取引内容を金融機関(以下「銀行等」ともいいます)に照会するにあたって、被相続人や相続人のみならず親族関係者(通常は相続人の配偶者及び孫まで)を含めています。その回答を事前に分析し、調査着手の段階で、家族名義の預金等(以下「家族名義預貯金等」といいます)が実質的に被相続人に帰属する預貯金、いわゆる名義預金であると強い確信を持って臨んでいます。事前の準備に怠りはないです。
一方で、世間一般的な認識としては相続は相続発生後に税理士に相談するものであるという認識です。最大でも10カ月となります
当該ページのタイトルとなりますが、下記についていかがでしょうか。
・相続人からの聞き取りのみで最大でも10か月の作成期間である税理士
・被相続人及び相続人を数年かけて追跡した税務署調査官
・上記ではいずれが優勢でしょうか
また、安部和彦「相続税調査であわてない名義財産の税務(第3版)」中央経済社(2021年2月20日)より
・p97より、逆にいえば、調査官は名義預金を把握し指摘することができれば、調査を優位に進めることができるため、その把握に注力することとなる。相続税調査において名義預金こそが「主戦場」となるのは、このためである。税務調査対策は、納税者と税理士との信頼関係が極めて重要であり、それには税理士が申告内容とその裏付けを可能な限りすべて把握していることが前提となる。名義預金の存在は、信頼関係を一瞬のうちに破壊しかねない爆弾ともなりうる。
したがって、相続税・贈与税に関する税務調査対策の基本は、名義預金をはじめとする名義財産を生じさせないこと、少なくとも相続人が把握していないような名義財産をしょうじさせないことになるだろう。
これらが弊所のコンセプトの根源となっております。
弊所が相続発生前から定期関与顧問による相続税報酬前払い節税対応プランを提供している理由について
まとめ
・税務署の調査官は時間をかけてじっくりと被相続人及びその周りの家族関係の資料を調べ、入念な下準備をしています。
・相続人である納税者及び税理士も対抗するようにじっくりと時間をかける必要があると解されます。