(2024年1月31日作成)

結論

・国税庁が公表しているデータによれば、少子高齢化の影響により年間の死亡者数は右肩上がりで増加しており、現在は毎年約150万人の死亡者数となり、その約10%の15万人が相続税申告の必要な被相続人の数となります。
・国税庁が公表しているデータによれば、その提出された15万人の相続税申告書に対して約8%である1万2千件の実地調査による税務調査が実施されていると解されます。
・なお、実地税務調査の割合算出にあたっては、
◎死亡者数の集計は暦年、相続税申告書の件数集計は11月から10月、税務調査の件数集計は7月から6月、相続税の申告書が提出された年度と当該申告書に対する実地税務調査が実施される年度はズレる、というそもそもの集計期間によるズレがあることが前提
◎平成27年(2015年)相続税基礎控除改正による申告対象者数の倍増による影響
◎令和2年(2020年)コロナ発生の影響による実地税務調査の大幅な減少

という前提のもと、総合勘案した結果の算出となります。

相続税の申告状況について死亡者数(暦年)のうち申告書提出のある被相続人(11月から10月)割合と調査件数(7月から6月)割合

相続税の申告状況について死亡者数(暦年)のうち申告書提出のある被相続人(11月から10月)割合と調査件数(7月から6月)割合・調査21事務年度(H21/7-H22/6)
・提出(H21/11月-H22/10月)
・調査22事務年度(H22/7-H23/6)
・提出(H22/11月-H23/10月)
・調査23事務年度(H23/7-H24/6)
・提出(H23/11月-H24/10月)
・調査24事務年度(H24/7-H25/6)
・提出(H24/11月-H25/10月)
・調査25事務年度(H25/7-H26/6)
・提出(H25/11月-H26/10月)
・調査26事務年度(H26/7-H27/6)
・提出(H26/11月-H27/10月)
・調査27事務年度(H27/7-H28/6)
・提出(H27/11月-H28/10月)
・基礎控除改正
・調査28事務年度(H28/7-H29/6)
・提出(H28/11月-H29/10月)
・調査29事務年度(H29/7-H30/6)
・提出(H29/11月-H30/10月)
・調査30事務年度(H30/7-R1/6)
・提出(H30/11月-R1/10月)
・調査元事務年度(R1/7-R2/6)
・提出(R1/11月-R2/10月)
・コロナ発生
・調査2事務年度(R2/7-R3/6)
・提出(R2/11月-R3/10月)
・調査3事務年度(R3/7-R4/6)
・提出(R3/11月-R4/10月)
・調査4事務年度(R4/7-R5/6)
・提出(R4/11月-R5/10月)
平均26事務年度以前平均27年基礎控除改正以後コロナ発生前(27年から30年)平均令和元年以降平均(コロナ発生後)
被相続人(死亡者数)/人1,141,865 1,197,012 1,253,066 1,256,359 1,268,436 1,273,004 1,290,444 1,307,748 1,340,397 1,362,470 1,381,093 1,372,755 1,439,856 1,569,050 1,318,1111,231,6241,325,2651,425,045
相続税の申告書(相続税額があるもの) の提出に係る被相続人数/人46,431 49,733 51,409 52,394 54,421 56,239 103,043 105,880 111,728 116,341 115,267 120,372 134,275 150,858 90,59951,771109,248127,423
課税割合(②/①)/%4.14.24.14.24.34.488.18.38.58.38.89.39.66.94.28.28.9
実地調査件数/件13,863 13,668 13,787 12,210 11,909 12,406 11,935 12,116 12,576 12,463 10,635 5,106 6,317 8,196 11,22812,97412,2738,543
実地調査割合(④/②)/%(弊所独自算出)29.927.526.823.321.922.111.611.411.310.79.24.24.75.412.425.211.26.8

(表1)相続税の申告状況について死亡者数(暦年)のうち申告書提出のある被相続人(11月から10月)割合と調査件数(7月から6月)割合

相続税の申告状況について死亡者数(暦年)のうち申告書提出のある被相続人(11月から10月)割合の算出について

・死亡者数の増加について、団塊の世代が死亡者数の世代に近づいていると考えられ、死亡者が右肩上がりに増加しております。今後当該傾向はしばらく続くと解されます。そうすると以下の数字を採用するべきと解されます。
◎令和4年(R4/1/1-R4/12/31)死亡者数1,569,050人

・上記の死亡者数の増加及び相続税基礎控除の改正により、相続税の申告書(相続税額があるもの) の提出に係る被相続人数も増加しております。今後当該傾向はしばらく続くと解されます。そうすると以下の数字を採用するべきと解されます。
◎提出日(R4/11月-R5/10月)提出150,858人

・上記のように死亡者数と提出件数の集計期間はズレておりますが、150,858人/1,569,050人=9.6%を課税割合として国税庁は公表しています。

・つまり「家族が亡くなった場合にどれくらいの割合で相続税申告が必要なのか?」という疑問については直近のデータを採用し、約10%とすることが妥当するように思われます。

実地税務調査件数及び実地税務調査割合について

・実地税務調査の件数ですが以下の無視することができない大きな論点による影響があり、そのまま平均することにやや疑義が生じます。
◎平成27年(2015年)相続税基礎控除改正による申告対象者数の倍増による影響
◎令和2年(2020年)コロナ発生の影響による実地税務調査の大幅な減少

・平成26年以前のデータ平均(平成27年(2015年)相続税基礎控除改正)
◎相続税の申告書(相続税額があるもの) の提出に係る被相続人数の平均、51,771人
◎上記に伴う課税割合の平均、4.2%
◎実地税務調査件数、12,974件
◎実地税務調査割合、25.2%

・27年基礎控除改正以後コロナ発生前(27年から30年)平均
◎相続税の申告書(相続税額があるもの) の提出に係る被相続人数の平均、109,248人
◎上記に伴う課税割合の平均、8.2%
◎実地税務調査件数、12,273件
◎実地税務調査割合、11.2%

申告数が2倍となりましたが、税務調査官の人数はそのままであると推測され、実地税務調査割合が1/2となりました。

・令和元年以降平均(コロナ発生後)
◎相続税の申告書(相続税額があるもの) の提出に係る被相続人数の平均、127,423人
◎上記に伴う課税割合の平均、8.9%
◎実地税務調査件数、8,543件
◎実地税務調査割合、6.8%

申告数が変わらず、実地税務調査件数が2/3となったため、実地税務調査割合も2/3となったと解されます。

・上記の期間のすべての平均
◎相続税の申告書(相続税額があるもの) の提出に係る被相続人数の平均、90,599人
◎上記に伴う課税割合の平均、6.9%
◎実地税務調査件数、11,228件
◎実地税務調査割合、12.4%

今後は、コロナの影響も収束していくと解されます。そうすると、「実地調査の件数」については「27年基礎控除改正以後コロナ発生前(27年から30年)平均」である「12,273件」が今後の実地税務調査の件数と予測されます。

そうすると、提出した申告書に対して相続税の実地税務調査が行われる確率は、

12,273/令和4年の相続税の申告書(相続税額があるもの) の提出に係る被相続人数150,858人=約8%

と算出しました。

まとめ

現在は毎年150万人が亡くなりそのうち約10%の15万人が相続税申告が必要な被相続人であり、その提出された相続税申告書に対して税務調査が行われる割合は約8%と算出いたしました。