(2024年2月8日作成)
当該ページの活用方法
・相続税法、相続税案件において重加算税が課税される基準、つまり隠ぺい仮装と認定される基準は明確ではありません。
・税務調査の事例は守秘義務があるため公になることはないため体験者に聞くことは困難となります(しかしなぜか税務調査が報道されることが多々あります。守秘義務が課されるはずの税務調査がなぜ報道されるのか – 税務調査の重加算税回避無申告解消専門全国対応京都の税理士 (tt-web.sakuraweb.com))
・国税不服審判所という、税法に特化した裁判所のような機関が裁決の一部を公表しています。
・相続税の重加算税の賦課をめぐっての争い、隠ぺい仮装の有無をめぐっての争い、が公表されているため、ご自身に当てはまるようなところが存在する場合には参考、活用できると解されます。
気が付いた点
・国税不服審判所が相続税贈与税事例において隠ぺい仮装を認めた裁決を公表している数が少ないという点
・当該公表されている隠ぺい仮装を認め重加算税が賦課されている事例の内容を見れば、処分庁が隠ぺい仮装を主張したことは当然でありいいがかりではない、と感じるような事例が多数であった点
隠ぺい仮装を認めた国税不服審判所公表相続税裁決について弊所独自の抽出ルール
概要
・2023年11月時点、国税不服審判所公表裁決、隠ぺい、仮装の事実等を認めなかった事例、60件
・平成9年以前の事例を除外かつ平成10年以降で相続税贈与税案件のみを抽出すると8件となった
・その8件のうち事例の難解さ等から3件を除外した
・つまり、平成10年以降の相続税贈与税事例のみを抽出し、5件となった
平成10年以降の相続税贈与税事例のみを抽出した理由
・税理士弁護士谷原誠は、「現在通用すると谷原誠が考える最高裁判例から重加算税の適否を判断することが最も妥当な判断方法である」としており弊所はその考えに賛同しております。
・最高裁昭和62年5月8日判決、最高裁平成6年11月22日判決、最高裁平成7年4月28日判決、最高裁平成17年1月17日判決、最高裁平成18年4月20日判決が、隠ぺい、仮装の有無の判断について現在国が採用している判例であり、当該判例によって分析することが妥当すると税理士谷原誠は解説しています。
・したがって平成18年以前を避け、平成19年以降の裁決事例のみ抽出しようとしたところ、その場合2件のみとなり合理性を欠く結果となりました(国税不服審判所が相続税贈与税事例において隠ぺい仮装を認めた裁決を公表している数が少ないのではないか、という気付きのきっかけとなりました)。
・現在において最も影響を及ぼしているのは最高裁平成7年4月28日判決と解されるため、平成7年以降である平成10年以降を抽出する、という弊所独自の考えを生み出しました。
隠ぺい仮装を認めた国税不服審判所公表相続税裁決一覧(弊所独自の抽出及び独自のオリジナルタイトルを名付けている)
・平成10年12月18日裁決(平成10年被相続人の高額の預金を計上せず高額の借入金のみ債務控除を計上したことについて隠ぺい仮装を認めた裁決)
・平成17年6月13日裁決(平成17年高額の預金口座の存在を認識しており取得した当該預金口座の残高証明を税理士に提出せず是正の機会があったが是正しなかったとして隠ぺい仮装を認めた裁決)
・平成18年11月16日裁決(平成18年投資信託受益権の当初申告漏れは税理士へ残高証明を渡し忘れた単純ミスではないとして隠ぺい仮装を認めた裁決)
・平成27年10月2日裁決(平成27年被相続人が作成した子の定期預金を名義預金と認定し当該定期預金を認識しており既に贈与したと発言した相続人妻及び相続人妻にすべてを委任したとして相続人子らに隠ぺい仮装を認めた裁決)
・平成28年4月19日裁決(平成28年相続発生前の預貯金の現金出金についての説明を避け事実と異なる収支表を作成して税理士に提示したとして隠ぺい仮装を認めた裁決)
国税不服審判所が相続税贈与税事例において隠ぺい仮装を認めた裁決を公表している数が少ないのはなぜかについてあくまで弊所独自の見解
・まず相続税贈与税に対して、多くの国民は嫌悪感、不満を抱いていると弊所は推測します。所得税、法人税、消費税等を納付した後に自身が形成した資産、財産に対してさらに相続時や贈与時にまだ課税するという仕組み、構造について理不尽に感じている国民は多数存在すると解されます
・そして、国民が相続税や贈与税について理解していることを前提としていることは理不尽、つまり相続税贈与税なんて知らなかった、は認められるのだと国民は感じていると解されます。
・上記のような状況で「相続税贈与税に加え、重加算税を賦課した」というような事例を多数公表すると、国民の不満がさらに爆発することを、国は恐れているのではないか、と推測しました。
あくまで弊所独自の見解となります。
当該公表されている隠ぺい仮装を認め重加算税が賦課されている事例の内容を見れば、処分庁が隠ぺい仮装を主張したことは当然でありいいがかりではない、と感じるような事例が多数であった点
上記のような感情を国民は抱いているという前提とすれば、国が相続税贈与税の裁決について公表しよう、公表しても反感を買わないだろう、と考えた事例のみ公表していると解されます。根拠としてはこちらのページをご参考ください。
国税不服審判所裁決要旨検索システムのキーワードを仮装として検索し年度別でまとめて相続税贈与税裁決を集計した表
・平成20年1月1日から令和4年12月31日において、裁決要旨検索システムでキーワード、仮装と入力した場合における相続税贈与税の事例件数は44件でした。
・そのうち、隠ぺい仮装を認めた公表裁決の件数は、4件でした
・そのうち、隠ぺい仮装を認めた非公表裁決の件数は、17件でした
つまり、隠ぺい仮装を認めた事例は非公表としている件数のほうが多い状況であり、弊所の見解の根拠としております。
隠ぺい仮装を認めた非公表裁決の件数も今後研究する所存です
国税不服審判所非公表裁決は、開示請求をすれば開示可能ですので、それらを開示し、研究材料とする所存です。
まとめ
国税不服審判所相続税贈与税公開裁決を参考にして、ご自身が隠ぺい仮装に該当するかの判断材料の一つとしてください。