(2024年4月8日作成)
結論
・相続税の税務調査において税務調査官から、隠ぺい仮装の存在を主張されたことに伴う重加算税の賦課決定、がされた場合であっても、国税不服審判所は隠ぺい仮装を認めなかった、つまり処分庁の実は言いがかりであったというようなケースは実際に存在する、と解されます。
・つまり、相続税の税務調査において隠ぺい仮装があり重加算税を賦課すると税務署が主張したとしても、国税不服審判所で争えば、実は税務署のいいがかりであり、重加算税賦課が取り消される可能性は十分存在すると解されます。
・当該ページの分析により、国税不服審判所の重課税賦課の判定基準のようなものが導き出されました。それは、認識、秘匿、調査時の態度、という基準です。
あくまで弊所独自の見解により、処分庁が隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりと感じた件数、いいがかりとは言えないと感じた件数まとめ
隠ぺい仮装を認めた国税不服審判所公表相続税裁決の中で、処分庁が隠ぺい仮装を主張したことはいいがかりと感じた件数、いいがかりとは言えないと感じた件数 | 件数 |
---|---|
いいがかりと感じた | 13 |
いいがかりとは言えないと感じた | 4 |
合計 | 17 |
いいがかりと感じた割合=13/17=76.4%
いいがかりとは言えないと感じた割合=4/17=23.6%
となります。
いいがかりと感じた、とは?
・処分庁が納税者は申告漏れ財産を認識していたと決めつけることが存在した場合、いいがかりと感じると定義しました。
・処分庁が納税者は税理士等に秘匿していたと決めつけることが存在した場合、いいがかりと感じると定義しました。
・処分庁が納税者のミスや失念ではないと決めつけることが存在した場合、いいがかりと感じると定義しました。
いいがかりと感じた事例一覧
・平成23年9月27日裁決(平成23年相続発生前の現金出金及び農協口座については納税者の認識及びその後の秘匿行為が存在したとして隠ぺい仮装を認め出資金については認識が存在しなかったとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・平成28年5月13日裁決(平成28年納税者である相続人は申告漏れとなった保険金の存在を認識しておらず正確な申告を行う姿勢を見せたとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・平成28年5月20日裁決(平成28年保険金の申告漏れについて意図的ではなく調査に協力的であったとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・平成30年2月6日裁決(平成30年不十分な内容の当初申告後に財産債務の収集を完了させたが修正申告書の提出が調査開始までに間に合わなかったとしても隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・平成30年3月29日裁決(平成30年調査開始後の自主修正申告だが事前通知後に自主修正申告申し出有りのため更正の予知は無かったとした及び納税者が相続開始前に引出した現金が相続財産に該当すると認識していたとは認められないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決(争点1更正の予知を中心に))
・平成30年3月29日裁決(平成30年調査開始後の自主修正申告だが事前通知後に自主修正申告申し出有りのため更正の予知は無かったとした及び納税者が相続開始前に引出した現金が相続財産に該当すると認識していたとは認められないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決(争点2隠ぺい仮装を中心に))
・平成30年10月2日裁決(平成30年納税者が認識していた満期共済金及び出資金が申告漏れであっても隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・令和3年2月5日裁決(令和3年納税者が認識していた共済金の申告漏れについて税理士の説明確認検討不足の可能性及び秘匿したまでとは言えないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・令和3年3月1日裁決(令和3年死亡保険金の申告漏れの原因について納税者の多忙や失念の可能性を否定できないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・令和3年3月23日裁決(令和3年1億円の保険金申告漏れの原因は保険担当者の財産にならない発言を誤解したからであるとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・令和3年6月3日裁決(令和3年質問応答記録書の内容をだけでは借入金の存在を否定できないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・令和3年6月25日裁決(令和3年税理士からの質問を誤解したことによる共済は掛捨てに移行している発言は虚偽の回答であるとまでは言えないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・令和4年5月10日裁決(令和4年相続人が預貯金の存在を認識していたと推認されたが申告漏れ預貯金の金額が相対的に少額であり調査時に申告漏れを自ら申し出たことについて隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・令和4年6月24日裁決(令和4年被相続人の株式や名義株式を記載したノートの未提出による当初申告財産漏れについて隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
下記において簡潔にコメントいたします。なお、事案の詳細については対象ページをご参照ください。
平成23年相続発生前の現金出金及び農協口座については納税者の認識及びその後の秘匿行為が存在したとして隠ぺい仮装を認め出資金については認識が存在しなかったとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決、について
・少額の金額である出資金も十分に認識していた、と処分庁が主張したことが言いがかりのように感じました。
平成28年納税者である相続人は申告漏れとなった保険金の存在を認識しておらず正確な申告を行う姿勢を見せたとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決、について
・平成28年5月13日裁決(平成28年納税者である相続人は申告漏れとなった保険金の存在を認識しておらず正確な申告を行う姿勢を見せたとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・保険金を当然認識していたと処分庁が決めつけている点が、言いがかりであると感じました。
平成28年保険金の申告漏れについて意図的ではなく調査に協力的であったとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決
・平成28年5月20日裁決(平成28年保険金の申告漏れについて意図的ではなく調査に協力的であったとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・申告漏れとなった保険金を認識していたと決めつけ、事実を隠ぺいする意図があったと推認されると決めけ、申告漏れになった理由はわからない旨の発言を虚偽と決めつけた点が言いがかりであると感じました。
平成30年不十分な内容の当初申告後に財産債務の収集を完了させたが修正申告書の提出が調査開始までに間に合わなかったとしても隠ぺい仮装を認めなかった裁決
・平成30年2月6日裁決(平成30年不十分な内容の当初申告後に財産債務の収集を完了させたが修正申告書の提出が調査開始までに間に合わなかったとしても隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・申告漏れとなった財産を認識していたと決めつけ、相続税を安くする目的で弁護士にファイルを渡さなかったと決めけ、弁護士に渡した旨の発言を虚偽と決めつけた点が言いがかりであると感じました。
平成30年調査開始後の自主修正申告だが事前通知後に自主修正申告申し出有りのため更正の予知は無かったとした及び納税者が相続開始前に引出した現金が相続財産に該当すると認識していたとは認められないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決(争点2隠ぺい仮装を中心に)
・申告漏れとなった財産を認識していたと決めつけ、税務代理人に事実の伝達をしなかったと決めけた点、が言いがかりであると感じました。
平成30年納税者が認識していた満期共済金及び出資金が申告漏れであっても隠ぺい仮装を認めなかった裁決
・平成30年10月2日裁決(平成30年納税者が認識していた満期共済金及び出資金が申告漏れであっても隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・税理士が適切に指導していたにも関わらず税理士に事実の伝達をしなかったと決めけた点、が言いがかりであると感じました。
令和3年納税者が認識していた共済金の申告漏れについて税理士の説明確認検討不足の可能性及び秘匿したまでとは言えないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決
・令和3年2月5日裁決(令和3年納税者が認識していた共済金の申告漏れについて税理士の説明確認検討不足の可能性及び秘匿したまでとは言えないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・税理士に事実を秘匿したと決めけた点、虚偽の申述をしたと決めつけた点、が言いがかりであると感じました
令和3年死亡保険金の申告漏れの原因について納税者の多忙や失念の可能性を否定できないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決
・令和3年3月1日裁決(令和3年死亡保険金の申告漏れの原因について納税者の多忙や失念の可能性を否定できないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・請求人が主張するような誤認はなかったと決めつけた点、税理士に事実を秘匿したと決めけた点、が言いがかりであると感じました
令和3年1億円の保険金申告漏れの原因は保険担当者の財産にならない発言を誤解したからであるとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決
・令和3年3月23日裁決(令和3年1億円の保険金申告漏れの原因は保険担当者の財産にならない発言を誤解したからであるとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・請求人が主張するような誤認は存在せず十分理解していたと決めつけた点、税理士に事実を秘匿したと決めけた点、が言いがかりであると感じました
令和3年質問応答記録書の内容をだけでは借入金の存在を否定できないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決
・令和3年6月3日裁決(令和3年質問応答記録書の内容をだけでは借入金の存在を否定できないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・借入金は存在しないと決めつけた点、が言いがかりであると感じました
令和3年税理士からの質問を誤解したことによる共済は掛捨てに移行している発言は虚偽の回答であるとまでは言えないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決
・令和3年6月25日裁決(令和3年税理士からの質問を誤解したことによる共済は掛捨てに移行している発言は虚偽の回答であるとまでは言えないとして隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・請求人は本件各権利を認識していたと決めつけた点、税理士に虚偽の説明をしたと決めつけた点、が言いがかりであると感じました
令和4年相続人が預貯金の存在を認識していたと推認されたが申告漏れ預貯金の金額が相対的に少額であり調査時に申告漏れを自ら申し出たことについて隠ぺい仮装を認めなかった裁決
・令和4年5月10日裁決(令和4年相続人が預貯金の存在を認識していたと推認されたが申告漏れ預貯金の金額が相対的に少額であり調査時に申告漏れを自ら申し出たことについて隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・請求人が本件貯金口座についてのみ残高証明書を取得しなっかったことは特異な行動と決めつけた点、会計事務所に対して秘匿したと決めつけた点、が言いがかりであると感じました
令和4年被相続人の株式や名義株式を記載したノートの未提出による当初申告財産漏れについて隠ぺい仮装を認めなかった裁決
・令和4年6月24日裁決(令和4年被相続人の株式や名義株式を記載したノートの未提出による当初申告財産漏れについて隠ぺい仮装を認めなかった裁決)
・請求人は本件株式を認識していたと決めつけた点、税理士に対して秘匿したと決めつけた点、が言いがかりであると感じました
まとめ
税務調査において税務署の調査官が、隠ぺい仮装が存在し重加算税を賦課すると主張したとしても、それがのちに取り消される可能性は十分あります。